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ソムリエの追言「ワイン界の町村合併!? 〜ボルドー5大コート〜 」



ソムリエの追言
「ワイン界の町村合併!? 〜ボルドー5大コート〜 」



「5大コート」をご存知でしょうか?
フランスには5大コートと呼ばれる有名なワイン生産地があります。

五大コート

コートCôtesとは丘陵の意味で
コート・ド・ブール
プルミエール・コート・ド・ブライ
コート・ド・フラン
コート・ド・カスティヨン
プルミエール・コート・ド・ボルドー
の5つの生産地を指します。

これらの生産地は元を辿ればメドックより葡萄栽培の歴史も古いのですが、 日本では言わば派手なトップ・スターの影に隠れてしまって 実力はあるのになかなか注目されない存在でした。 しかし近年、より低価格でしかも美味しいワインを飲みたいという需要から、 日本でもこれらの生産地域の見直しが進められ、評判も徐々に上がってきています。

フランスでは毎日飲めない格付けワインよりも、 むしろ5大コートの方が市民権を得ていると言えます。 私はそんな気取らない雰囲気をもった5大コートになんだか親しみを感じます。

ボルドーでは8年前の2009年、 新しいAOC(原産地呼称統制)
”Côtes-de-Bordeaux(コート・ド・ボルドー)”が誕生しました。

これは、日本を始めヨーロッパ以外の国々で過小評価を受けてきた5大コートやその近隣の生産地を一つにまとめて、一目でボルドーのAOCだと分かりやすい名前に変える事で、国際競争力の強化を目指そうというものです。
ちいさな村が合併して村おこしを行なうようなイメージではありません。
今後の展開に大いに期待が集まっています。


孤高の生産地
さて、このAOC統合に初めは協議に参加していましたが、 最終的にコート・ド・ボルドーへの統合を拒んだ「Côtes」の名をもつAOCが1つだけありました。それはシャトー・ラ・ジョンカードのあるCôtes de Bourg(コート・ド・ブール)です。ちなみにブールは5大コートの中ではもっとも高く評価されている地域です。

統合に参加しない理由は、歴史ある”ブール”という名を捨てて 他の産地と一緒になるよりも、昔からの名称を用いた方が今後の国際的な展開に有利という事です。群れる事を良しとしない一匹狼的な存在、それがコート・ド・ブールなのかもしれません。

しかしコート・ド・ブールが統合に参加しなかったのにはもう一つ、
別の理由があるとも言われています。

もう220年以上も昔の事ですがフランス革命の後、 隣同士のブールとブライはこの地域の統治権を争って激しく対立しました。 国同士の戦争と比べれば、本当に小さな小競り合いに過ぎませんが、 歴史の傷はいまだに二つの町に住む人々の心を隔てていて、 仲良く手を組んで同じAOCになるなんてあり得ないという訳です。

実際には気候、土壌、葡萄品種と非常に似通っていて、 それぞれのワインを飲み比べてみると共通点も多く、 「ワインの品質」という面から言えば同じAOCになったところで何の問題もないように思うのですが。

それよりもむしろ、遠く離れたコート・ド・フランやコート・ド・カスティヨンがすべて同じAOCになる事の方が、ワインの品質から見れば不自然なような気もします。 味わいを決める葡萄品種一つ見てもブール・ブライはメドック寄りでカベルネ主体のどっしりしたタイプ、コート・ド・フランやカスティヨンはサンテミリオン寄りでメルロー主体の柔らかい質感をもったワインが多いのです。

「消費者に分かりやすく」を建前としているAOCも、 実際には色々と難しい事情の上になりたっているところも多く、 まだまだ一般消費者から見れば複雑で、改善の必要がありそうです。


AOCは、フランス農林省管轄の組織INAOが管理し、 特定の産地内で栽培された葡萄100%で作られ、葡萄品種、栽培法、醸造法、熟製法と厳しい規定をクリアした上に、試飲検査に合格したワインにのみ付与される品質保証です。




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