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名人のこだわり「血と肉」について(後編)


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名人のこだわり
「血と肉」について(後編)

前回は血と肉についてをお送りしました。

血自体は不味い物でも、悪い物でも無いですが、
鮮度によって悪くなりやすいので
結果として血が原因で味が落ちている場合が多いのです。

昔のジビエの料理法というのは、城の領主が狩りをして捕ってきたものを
すぐに調理するというところで成立してきたものです。
その料理法は今も残ってはいますが、
当時の料理法だけに囚われてしまうとおかしくなります。

今ではヨーロッパで捕られたジビエが日本にまで来るような状況です。
そこまで食材の「経路」は変わっているのに
「料理法」が変わらないのでは無理があります。

血の鮮度の話というのは、詰まるところではこの経路の話です。
その中で血の鮮度が落ちなければ、使えるという事です。

魚の血抜きに関しては、その主な理由は「持たせる」為です。
血を抜かない方が、身の味には厚みがあります。
鮮度が良いうちに食べられるのであれば、血は抜かないほうが美味しいのです。
その場で食べてしまうような、鮎の塩焼きなどは血抜きをせずそのまま焼いてしまいますよね。

血抜きをせず氷でしめるだけ、というやり方ですと、
弱って行って死ぬわけでもありませんので、美味しいです。
ただ、味が落ちるのがずっと早いのです。
身がいかっている、その時の身の甘さ、これが無くなっていきます。
捕ってすぐの魚を食べる事はなかなかできませんので、血抜きを行うのです。

マグロの捕り方で味の違いが大きい、という話を以前させていただきました。
それは一本釣り、延縄、という獲り方の差が
マグロの血に影響し、身の味に影響を与える為です。

一本釣りでは、最近では針のところから電流を流して魚を弱らせながら釣り上げる、という釣り方をします。
延縄は針に引っ掛けてそのままですので、マグロは息ができず、揚げる前に死んでしまいます。
定置は大きく網に捕らえ、揚げる時に頭をガツンと叩いて瞬間的に殺します。
これは肉のと蓄に近いのかもしれません。

この中で、臭いが一番出ないのが定置で、FONDではこちらを使います。
本マグロでも定置ですと、これが本マグロか、と言うくらいに癖が出ません。
ただ、逆に本マグロの癖、酸味や渋味、独特の臭いが出ないと嫌だ、
と定置を好まないお店もいらっしゃいます。ここは好みの問題でしょう。

血を劣化させないという処理方法は、冷凍するしかありません。
ですので安い、冷凍のマグロには血の臭みがないのです。
その代わりにマグロの風味までわからなくなってしまいます。

戻り鰹
戻り鰹


カツオも血の影響が大きいです。
カツオもマグロと同じく、泳いでいないと呼吸ができない魚です。
こういった魚は身に血が多く赤身となります。
逆に短距離を瞬発力で泳ぐ魚は身は白いですね。

カツオは痛むのが大変に早く、鮮度が良い状態が大変に短い魚です。
本当に持つものでも、揚げてから3日でしょう。
FONDでは太平洋側のカツオですと、市場から買った日にしか使いません。
不思議な事に日本海側のカツオは持ちが良いです。
身がマグロに近いような物があり、言わなければカツオとはわからないような物もあります。
カツオの臭いもしません。

カツオはたくさん出回る魚である一方で、鮮度が良い状態で売られている事が少なく、
元々の「カツオの味」と思われている味自体が、誤解されて認識されている魚かもしれません。
「血の鮮度が落ちやすい」という事がよく表われた魚と言えます。



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