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外交官 第16話  現場に行かなきゃわからない(その3)中国南西部地方で感じた長期成長の胎動

【小川 郷太郎】
全日本柔道連盟 特別顧問
東大柔道部OB
丸の内柔道倶楽部
外交官

第16話 現場に行かなきゃわからない
(その3)中国南西部地方で感じた長期成長の胎動

これももう20年前ぐらいの経験であるが、外務省の国際情報局に所属してた時、情報収集・分析活動のテーマのひとつとして、中国の経済発展の持続可能性の問題を取り上げた。

当時、香港に接する深圳などの中国沿海部の都市が目覚ましく発展して中国全体の経済発展振りが注目されていた。

広州珠江の朝(1996.8.16.)
【広州珠江の朝(1996.8.16.)】


しかし、様々な問題も予見され、とくに都市と地方の大きな格差が中国の持続的成長の足かせになるだろうとの指摘もあった。とくに南西部の地方の遅れが取りざたされていたので、私は、現場に行って関係者と会い、またあちこち視察することとした。
西安、西都、重慶、雲南などの内陸部都市や周辺の村落を見て周った。
1週間余りの視察や現地関係者との面談で、私は、「中国の経済発展は、種々問題はあっても今後相当期間持続するであろう」との感触を得て、報告書をしたためた。

そう考えたのは、主として次のような理由による。

①確かに北京から遠く離れた内陸部の発展振りは沿海部や北京と比べれば相当遅れてはいるが、90年代半ばの時点ですでにこの地域の各都市では凄い建設ブームが起こっていた。
「資本がないから発展が遅れるだろう」という観測に反して、建設ブームを支える資金は東南アジアにいる華人たちから来ていることが分かった。それも、一部の地域だけでなく多くの地方都市に華人資本が入ってきているようであった。

②地方の官憲と話をすると、それぞれの地域の弱点や問題点を認識して、我々から見ても適切だと感じられる対策を種々とろうとしていた。

③貧しい村落で、例えば、アヒルやガチョウを飼育して商売している農家を見ても、その家禽や豚などの数が半端ではない規模である。膨大な人口をもつ中国の胃袋は巨大であるから、農業を営む者にとっても大きな需要を期待できる。全国的に流通面で障害はあろうが、近隣の都市に輸送すれば、相当いい商売ができるように思われた。

④地方の都市を歩いていると、夜遅くなっても店は開いていて、そこに多数の家電製品、オートバイ、衣類、子供用品などの商品が豊富に出回っていて、多くの人が品定めをしていた。購買力のある層もかなりいるのだろうと推測できた。

⑤夜遅く通りを歩いてみると、子供たちまで動員してひとつでも多くの物を売ろうとする道端の商人たちと買い手の交渉もよく目にした。旧ソ連時代の全くやる気のないロシア人の姿勢から見ると、中国人のこの道端を這ってでも金を儲けようという商人魂に強く印象付けられた。

広州楊堤付近漓江6景の1(1996.8.19.)
【広州楊堤付近漓江6景の1(1996.8.19.)】


こうして現場を見ると、遅れているはずの地方にも、資本と言い、行政と言い、経済活動を担う庶民に至るまで、強いエネルギーが存在し、これが経済発展を持続させるうえで重要な要素になるであろうと感じた。

実際、その後の中国の経済発展はずっと持続してきた。
現場で得た感触も間違ってはいなかったとの思いが今でもある。



筆者近影

【小川 郷太郎】
現在





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