外交官 第24話 近隣国の実情と日本(その5 アジア、オセアニアの状況)

2016/06/08

【小川 郷太郎】
全日本柔道連盟 特別顧問
東大柔道部OB
丸の内柔道倶楽部
外交官

第24話 近隣国の実情と日本  

(その5:アジア、オセアニアの状況)
個別に近隣国の状況を描いてみたが、その他の国も含めて地域的に大きく捉えて考えることも必要である。その観点から、アジア全体とオセアニア地域に触れてみたい。
アジアも分け方によって、北東アジア(日本、中国、朝鮮半島、モンゴル)、東南アジア(アセアン諸国)、南アジア(インド、スリランカ、ネパール、ブータンなど)があるが、さらにオーストラリア、ニュージーランドをはじめとするオセアニアなども併せて見ると、全体としては、この地域はおおむね安定的で、世界の中でも経済成長の度合いが大きい。かつては英連邦に属したオーストラリア、ニュージーランド両国もアジア地域と一体となって進む方向が定着し、両国にアジア系の移民も相当増えている。

経済的見地から言うと、それぞれ人口13億、12億の中国とインドが依然として相当の成長率で発展しつつあり、昨年末には人口6億のアセアン10か国が「アセアン経済共同体」を発足させ域内市場統合に向けて前進したことや、日本を含めた数か国が環太平洋を包含するTPP加盟に向かって走っている。
アセアンの中では、インドネシアやタイ、フィリピン、ベトナムなどもほぼ順調に発展しているし、後発国のカンボジア、ラオス、ミャンマーも成長路線を続けている。南アジアの大国インドとの関係の一層の強化も重要だ。安倍政権が官民協調でこの地域を中心にインフラ構築を含めた関係強化を図っていることは正しい道である。

日本にとって極めて重要なこの地域が安定的に発展していることは喜ばしく、世界経済が不安定な中でこの地域との経済関係を大切にし、さらに強化したいものだ。ただ、日中韓3ヵ国とアセアンを包含した「東アジア共同体」構想は、日中韓関係の停滞で近頃話題にならなくなったが、重要な課題としてさらに追及すべきである。



フィリピン・オルモック風景
【 フィリピン・オルモック風景 】


アジア地域の主な流動的要素としては、日本を含む地域諸国と中国との関係、そして朝鮮半島情勢がある。先に述べたように中国との関係は最も難しいが、むしろ日本が主導権をとって東アジアの連携強化を進めることが望ましい。この枠組みで主導権をとろうとする中国とどう折り合いをつけるかは非常に難しいが、日本は信頼感を得ているアセアン諸国とさらに緊密な協力関係を築いてリーダーシップをとる方向で努力すべきである。中国との協調を目指しながら、一方でアセアン諸国と一層緊密化を図ることがカギになる。

北朝鮮とは、通常の論理では対応できない場合が多い。他国を破壊しうる軍事力を持つこの国への対応は、やはり日米韓を第一の要素として考えていくべきだ。中国の協力も得られれば良いが、最近の中国の北朝鮮への影響力は弱まっているし、我が国や韓国との利害が一致しない場合が多いのであまり多くを期待できないであろう。

筆者近影

【小川 郷太郎】
現在





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