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ソムリエの追言「フランスワインたらしめるコンセプト テロワールについて」 


ソムリエの追言
「フランスワインたらしめるコンセプト テロワールについて」 

特殊な貴腐ワイン 茂った樹木の間から、朝日が差し込む。
肌寒さを感じさせるシンとした空気の中に、聞こえる静かなせせらぎ。
シロンの小川が奏でる軽やかなさざなみの上に、この季節独特の朝もやが立ち上り始めた。

10月~11月にかけて、ここソーテルヌは、ゆっくりと辺り一帯がもやに包まれる。
ひんやりとした、湿度と冷気を頬に感じる。
畑のブドウが朝日に照らされ、輝いている、まるで黄金のブドウのように。
いつの間にか、ブドウの実に水滴がついているからだ。

この湿度が、ブドウに「貴腐菌(きふきん)」となるカビを付け、
濃縮するため果皮に穴を空けていく。

ゆるやかな時が流れて、 陽が高く上る、秋の午後の暖かさを感じる頃には、
ブドウ畑ではもやが晴れ、あちらこちらのブドウ実から 果汁の水分が目に見えぬ水蒸気となって昇っていく・・・

「テロワール」の恩恵を受け、ここソーテルヌ地区のカビが生えたブドウは 貴腐ブドウへ、そして貴腐ワインへと転生(てんしょう)していく。


朝日の差し込む畑

偶然の自然的要因 「テロワール」
カッコイイ響きです。

ワイン通の間では、ごく当然の言葉で使われますが、
一言で表せない、言葉でもあります。

辞書で引くと、 【耕地、農産地、産地】 と出ています。

しかし、ワイン通の言う「テロワール」は、
その土地の様々な要因で作られた土地の個性 と解されています。

その要因は

【気候】  
気温
日照量
緯度(いど
降雨量



【土壌】
含有成分(がんゆうせいぶん
地層の構成
水捌(みずは)け
PH(酸度・アルカリ度)
肥沃(ひよく
きめ

【地勢】
傾斜
標高
畑の向き・方角

と、様々です。

ワインの元は、ブドウ。
ブドウは農産物で、植物。
植物が、よりよく育つための、要因です。
大地からの水と養分、 空からの日光をうけて
病虫害を避けるべく、風をうけて育っていくのです。

日本の中でも、北海道と沖縄が異なるように、
場所が違えば、気候が異なります。

そして、同じ地域でも、川の存在や、 斜面の微妙な傾斜の違いや向きの違いによって変わる 日当たりや風の量でも異なるという 「ミクロ・クリマ(微気候)」が、存在するとか。

その代表例が最初に挙げたソーテルヌ。
この地区だけ、特別な偶然の「ミクロ・クリマ」「テロワール」によって
特別な「貴腐ワイン」ができるのです。

また、同じ畑の中でも、 「ミクロ・クリマ」が、存在すると考えられています。

このためか、 まことしやかに言われているのは、 同じ地区でも、隣の畑とこの畑では、自然的な要因が違うので、 出来るブドウ・ワインが違うといわれます。

偉大なる人の「力」 確かに、そうかも知れません。

でも、実際、先日のサン・テミリオンのクロ・サン・ヴァンサン一帯で 見たとおり、
畑が違えば、所有者の手入れの仕方も違います。

ですから、出来るブドウ、ひいてはワインも異なります。

自然的な要因だけではなく、
実際に携わる、人の要因も大きいのです。

また、土壌も、ボルドー・グラーヴの畑のピレネー山脈からの小石を活かした畑や、
小石を活かした畑
【グラーヴ地区の畑】


南フランス・ローヌ渓谷のアルプスからの丸い大きな石がある畑など、
南ローヌの畑
【南ローヌ の 畑】

普通の土だけの畑とことなり、
蓄熱(ちくねつ)を活かす「テロワール」として有名です。

しかし、これを活かす判断をしたのは、結局、人なわけです。

人の力があって初めて真の「テロワール」が、ワインに現われるわけです。

最近の日本のワイン生産者の目覚しい成長。
ここ、日本にだって、多湿の「テロワール」があるわけです。
その「テロワール」を徐々に、人の知恵や技術で克服していって
よりよりワイン造りに活かすようにしているわけです。
高棚式栽培
【日本の湿度を避ける、高棚式栽培】

遥かなる「テロワール」 フランスの長い歴史の中で、見つけ育てられた「テロワール」
フランス・ワインを象徴するコンセプト。

これから、世界各地でその新しい「テロワール」が生み出されてくるはずです。

一時、フランスの、「カベルネ」「シャルドネ」が、世界中に行渡りました。
その後、やはり、その地にはその地にあったブドウがあるはずという回帰的な
土着【品種】主義に戻ってきたところもあります。

フランス以外の産地が、その地の「テロワール」にあったブドウを見つけ、育んでいけば、 新しい「テロワール」と新しいワインの世界が開けてくるように思えます。
ただし、100年後、いや、1,000年後になるかもしれませんが。

それだけ、ワイン造りにおける成果が、根付くには、時間というものがかかるんです。



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