ワインの香りについて

多種多様な広がりを持つ ワインの香り

フランスの物理学者エルヴェ・ティス博士が、 「ワインは鼻で飲む!」と提唱するように、 数あるアルコールの中でワインほど多種多様な香りの広がりをもつものは、 他にないように思います。

香りの役割

ワインの香りは一般に果物や花に例えられることが多く、他には野菜、香辛料、ハーブ、動物臭など様々に表現されます。

MICHIAGMIワインで言えば、デュック・ダンリから青リンゴのような果実の香り、 ラーム・ドゥ・ローズからはピーマンやトマトの香り、 そして香りが開いたジョンカードの紅白ラベル赤ラベルからは、 ビターチョコレートのようなほろ苦い香りが感じられます。

ある香水の香りを嗅ぐと、 ふとその香水を使っている人の顔が思い浮かぶ事があります。

しかし、この香りの記憶というのは感覚的なもので、 それがどんな香りか言葉で説明するのは、すごく難しいのです。

そこで、その香りを、似たような香りを持つ一般的な物にたとえて、 相手にイメージを伝わりやすくしているのです。

ただ漠然と、「甘い香り」と言われるよりも、 「蜂蜜のような甘い香り」と言われた方が、 イメージがぐっと鮮明になりますね。

また、自分でそのワインがどんな香りだったのか、 記憶しておくのに、何かにたとえる表現はすごく役立ちます。

ところが、ソムリエコンテストの影響からか、 感じられるニュアンスを10個も20個も羅列しているテイスティングコメントを見かける事があります。

コンテストでは表現力も評価されるので、「たくさん言った者勝ち!」的なところもありますが、これでは受け手に上手くイメージが伝わってきません。

全体像として支配的な香りは何なのか、 またそれに伴う補助的な香りは何なのか、 表現のうえでは的を絞ってとらえる事が大切だと考えています。

果実香への回帰

元来、ワインの香りとは果実の香り、熟成によって変化する葡萄の香りをさしていました。

ところが20年ほど前から樽香がしっかりついたワインがもてはやされるようになりました。

樽

熟成させる際に、木の香りが強くでる新樽をどれくらいの割合で使うか(新樽比率)が、使用する葡萄品種の比率(セパージュ)よりも注目されたそうです。

※樽熟成の際に全体で100個の樽にワインを詰めるとした場合100個すべてを新樽で揃えれば新樽比率100%、その内50個を新樽にして残り50個の古樽とブレンドした場合、新樽比率は50%になります。

中にはブルゴーニュのドミニク・ローランのように新樽に詰めた熟成中のワインを 半年後にまた別の新樽に移し変える「新樽200%」なる技法を使う生産者も登場し、 いったいワインを飲んでいるのか、オークのエキスを飲んでいるのか、分らないぐらい強い木の香りをつけたワインが流行っていました。

その風潮もすこし落ち着きをみせているようです。

最近の傾向では、白ワインは南アフリカのシャルドネのように白桃やパイナップル、マンゴーといったトロピカルフルーツのアロマが強く感じられるタイプ、赤ワインは果実味を活かしつつ比較的早い時期から熟成感を楽しめるメルローを主体にしたタイプが注目されています。

フルーツ

いずれにしても、樽香だけに頼らない、葡萄本来の味わいを大切にした造り手に人気が集まっていると言えます。

ワインは食事とともに

ワインがこんなに豊かな、そしてはっきりとした香りを持つのは、 フランス料理のためではないでしょうか。

素材も味付けも多種多様で主張の強いフランス料理、 だから料理に合わせるワインも表現豊かなのだと思います。

そう考えると、美味しくて力強い料理には、なんとワインの必要な事でしょう!