外交官 第9話 フランス人の「生きざま」(1/2)

2013/10/11

【小川 郷太郎】
東大柔道部OB
丸の内柔道倶楽部
外交官

第9話 フランス人の「生きざま」 (1/2)

日本ではよく「フランス人は個人主義的」だといわれる。
個人主義的でない日本人から見ると、何となく自分勝手というイメージでとらえられることがあるが、付き合ってみていると、フランス人は結局「自分を大事にして生きている」ということではないかと思う。

カフェ・マドレーヌ(パリ)
カフェ・マドレーヌ(パリ) (2010年8月)

日本人にも自分の考えや趣味があるが、それ以上にフランス人は自分が何をしたいかが明確である。自分の頭で考えて自分に一番ふさわしく、あるいは自分が一番したいことを主張するし、その理由づけもはっきりしている。そして、そのしたいことを実現しようと努力する。

そういう姿勢の背景には、自分の生活の「質」を出来るだけ充実したものにしたいとのしっかりした意欲があるようだ。日本人には周りのことを考えて自分を抑えることが多い。 彼らを見ていると、個人主義的な生き方もいいものだなと感じる。

例えば、大多数のフランス人は夏に1か月ほどのバカンスをとる。ふつう、前の年からバカンスの計画を立てて楽しみにしている。キャンピング・カーを引っ張って何箇所かを移動することもあるが、一か所に留まってゆったり過ごす方が多いのではないか。子供と一緒の場合が多いので、じっくり家族の絆を温めるのにもいい機会だ。

ロワール河畔風景
ロワール河畔風景 (2010年8月)

日本人はどちらかというと、仕事をすることに価値を見つけ、また、責任感もあるので、あるいは他人を慮ったりして、長い休みは遠慮する。日本人は、やりかけの仕事のことが心配だったり、長い休みに何をしたらいいかわからなくて戸惑ったり、あるいはお金もかかると心配もして、認められている休暇日数も消化しないで我慢をする。だから、人生を振り返ってみると損したような気分になる。

フランス人は、仕事は生活の手段ととらえて、自分のやりたいことを優先的に実施する。日本人からすると驚くかもしれないが、レストランとかクリーニング屋も一か月閉店する。予め何日から何日までバカンスで閉店しますと張り紙をして堂々と休む。その店に行きたかった人は別の店に行くしかない。

クリーニング屋にワイシャツを入れておいたので取りに行ったが「バカンスで閉店」だったりすると、泣いてもわめいても取り出せない。ひと月待つしかない。フランス人はそういうものだとして、腹も立てず何事もないように平然と生活をする。

役所を相手に継続的に交渉している事項があっても、相手の担当者はバカンスを優先して休む。誰か代わりの人が引き継いでくれることもあるが、そうでない場合も多い。

しかし、急いでいる案件が決着できなくても、実際にはひと月遅れるだけで、天地が引っくり返るようなことにはならないことをフランスに住んでみて悟ったときもある。

フランス人はなぜ、バカンスをとるのかと思って、彼らの様子を観察してみた。私の結論では、彼らは、バカンスを通じて人間性を求めようとしているのではないかと考える。日本人よりは勤勉でなくても、彼らは「仕事ばっかりで、やっていられないよ」と大げさにこぼす。だから、バカンスで息を吹き返したいのだ。


続く


ヴィル・ダヴレ(パリ近郊)の池・晩秋の風景
ヴィル・ダヴレ(パリ近郊)の池・晩秋の風景 (1983年11月)



筆者近影

【小川 郷太郎】
現在





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