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外交官 第22話 (その3) 「石橋を叩いても渡らない(?)慎重居士」

【小川 郷太郎】
全日本柔道連盟 特別顧問
東大柔道部OB
丸の内柔道倶楽部
外交官

第22話 内向きで衰退する日本 (その3)
「石橋を叩いても渡らない(?)慎重居士」


「石橋を叩いて渡る」という表現がある。外国人の多くと比較すると、日本人はとても用心深く慎重である。何かをしようとすると慎重にいろいろなことを調べて検討する。

慎重さは必要であるので良い面もあるが、時には、叩いてみるとて頑丈で大丈夫そうでも「もしかしたら」などと万一のことを考えて渡るのを長く躊躇したり、結局渡らなかったりすることがある。慎重さが昂じて、自護的になり過剰なほどに防御姿勢をとりがちだ。

原発事故の問題では慎重さが大いに必要だが、問題によりけりで、変化の激しい世界や社会の動きの中では果敢な行動が必要である場合が多い。
韓国人は石橋を叩かずに真っ先に渡る果敢さと大胆さがある。石橋は滅多に崩れることはないので、たまには失敗しても多くの場合成功して利益を得ている。

万事慎重な日本ではまず調査・検討する。国会答弁でも政治家や
官僚が「慎重に検討します」という。そういう時は、やりたくない、やらないことを暗示しているかのようだ。

改革が必要な時でも、政府は慎重に先ず「有識者会議」みたいなものを作って、相当の年月をかけて検討させる。様々な重要課題について、これまで幾多の有識者会議からの報告や勧告が政府に提出されたことか。でも、大部分が店晒(たなざら)しになってきた。
歴代首相はしばしば「抜本的改革」を唱えるが、「抜本的」というほどの中身がないことが多い。異論を尊重するとの言い訳もあるが、「万事公論に決すべし」を重視しすぎて、時代の波についていけない。

つまり、日本の動きにはカタツムリの歩みに似たところがあって、適時の対応に遅れ、社会の活力を削いで国際競争力を失わせ、国力の衰退を招いてきた。

先に述べた東大の「秋入学導入」もそうだが、もっと重要な課題もある。少子高齢化社会に伴う社会保障制度の行き詰まり、巨大な財政赤字をふまえた「税と社会保障の一体改革」などの一連の課題がその典型だ。
もう四半世紀以上前から歴代内閣がその必要性を認識しながら、選挙目当てで増税を含む改革を怠ってきた。手をつけ始めたのはやっとつい最近のことである。
四半世紀も遅れたことで改革のコストとはさらに巨大になってしまった。慎重さというより、政治の不作為であり、懈怠でもある。

地方分権問題も百家争鳴が続き何十年と議論されてきた。いくつかの「抜本的改革」にも関わらず、まだ中央集権的仕組みは基本的には変わっていない。
今般ようやく法律が通った「マイナンバー制度」もそうだ。行政業務の簡素化などのメリットはあるが、課題も多いので慎重な議論がなされてきたと言えば聞こえはいいが、佐藤内閣が「国民総背番号制」導入を目指したのは1968年だ。様々な意見が出て、結局頓挫した。
世界を見ると、内容こそ異なるが多くの国で共通番号制度が導入されている。米国は1936年、英国は1948年だそうだが、多くのヨーロッパ諸国では1960年代から70年にかけて制度が成立している。これらを見ると、やはり日本は慎重で、カタツムリの歩みで歩んでいるみたいだ。

芝増上寺・三縁山 ( 1995.8.6.朝 )
芝増上寺・三縁山 ( 1995.8.6.朝 )


日本人の慎重さは、最近の企業の海外進出についても言える。私は、外務省の最後の仕事として「イラク復興支援担当大使」に任命された。戦争後のイラクの復興を助けるため、日本政府は円借款などの支援も相当行ってきているが、民間企業による貿易や投資がこの国の経済を発展させる大きな要素でもある。

以前にも述べたが、イラク側は復興のために是非日本製品を輸入し日本からの投資を期待していると熱心に述べて、日本の企業との協力を熱望している。当時も今も治安には問題が多いが、必要な防御措置をとれば日本企業が活動できる地域や事業は存在する。石油などイラクの膨大な資源や発展の潜在力も見て、多くの国の企業がイラク進出を図っていた。

私も日本企業の幹部に再三イラク進出を要請したが、殆どの企業は一般的な治安状況を理由にきわめて慎重な姿勢をとった。この間、韓国、中国、トルコや欧州の企業は治安情勢を調査しながらも行動する姿勢をとった。だいぶ遅れて日本企業は少しずつ進出し始めたが、韓国などの企業に先行利益を奪われている面がある。

これまで述べてきた日本の「井の中の蛙」的思考と行動様式、個性や積極性の欠如、過度の慎重さなどは、いずれも日本の国際的競争力を削ぎ、国力を衰退させる要因であるように思えてならない。
「世界を見よ、グローバル化に乗れ、羽ばたけ、ニッポン !」
と大きな声で叫びたい気持ちだ。

筆者近影

【小川 郷太郎】
現在





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つまり、日本の動きにはカタツムリの歩みに似たところがあって、適時の対応に遅れ、社会の活力を削いで国際競争力を失わせ、国力の衰退を招いてきた。
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