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ソムリエの追言「ワインの選び方 ヴィンテージ」



ソムリエの追言「ワインの選び方 ヴィンテージ」

「この92年は、豊作?」

と、ワインリストを手にした男性の言葉。

「いえ、豊作というより、天候不順です、が・・・・」
説明を続けようとするその言葉をさえぎるように、

「じゃあ、このワイン飲んでみたいんだけど」

「良い年ではないですけど宜しいんですか?」

「このワインって、昔出来の悪かった息子って感じだろ」

「え、?」

「だから、手が掛かったけど、立派に世に出たんだろ。」

実におもしろい考え方でした。 逆説的な考え方です。
そして、それが見事なまでに本質を突いているのです。

ヴィンテージチャートなるものが存在します。
天候から、ブドウのあくまで一般的な作柄の良し悪しを 数値にして総合的に評価するものです。 良い評価にばかり気にかけてしまいがちですが、
本来のこのチャートの目的は、別のところに有るのです。

農作物の面と熟成するものとしてのワインの特性を 表したものなのです。
つまり、天候が良くてブドウの状態がよければ、
それだけ濃縮したワインとして出来上がり、熟成耐性もあがり、
飲み頃を迎えるまで時間がかかります。

一方、ブドウの状態がよくなければ、熟成耐性は下がるので、
飲み頃を迎えるのが早くなります。
そう、飲み頃の目安を伝えることが目的の一つなのです。

そして、もう一つ言える事は、ヴィンテージの良くないとされるワインは、
ある意味努力して作られているということです。
良いときは手を加えなくてもよい、
だからこそ、よくない時に 手をかける、大事にする。

今回の男性のワインの選択もそんな精神を持っていた方だからこそ、
そのワインの魅力的な時期に出会ったのです。

実際、そのワインにとって、飲み頃を迎え始めた味わいで満足されていました。
もちろん、味わいは良い年のほうが大概、美味しくなります。
しかし、飲むべき時期を迎えているものから飲むことこそ
ワインの楽しみ方に通じている気がするのです。

注意すべきは、ヴィンテージチャートはあくまで目安であり、
産地・生産者によってブドウの生育状況が異なること、
また 各発表団体毎によってチャートの指標も異なることを付け加えておきます。

ぜひとも、ヴィンテージチャートを参考にしたワイン選びをしてみてください。



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ソムリエの追言「シャンパーニュとスパークリングワインの一般的な造りかた」



ソムリエの追言「シャンパーニュとスパークリングワインの一般的な造りかた」

シャンパーニュ・スパークリングワインの一般的な造り方


「シャンパーニュって、高級スパークリングワインのことですよね。」

「そうでもあるけど・・・ そう、造り方をみれば、シャンパーニュ・高級スパークリングと通常のスパークリングワインの違いが判(わか)りますよ!」

●外国の方の読者も多くいらっしゃるので、漢字にふりがなをつけてお送りしております。

というわけで、
今回は【 シャンパーニュとスパークリングワインの造りかた 】です!   

ワインをつくる 醸造過程(じょうぞうかてい)は基本的に一緒(いっしょ)です。
そこに泡(あわ)が出るか、出ないかの差はどこからくるのでしょうか?
シャンパーニュの造り方で話を進めます。

シャンパーニュで使うブドウは 3種類です。 
黒ブドウのピノ・ノワール ピノ・ムニエ 白ブドウのシャルドネ。


-------------------スパークリングワインでは、この3種を含めて、その地域の規則にあったブドウや独自で選んだブドウで良いわけです。

まずは、そのブドウで原酒(げんしゅ)となる辛口の白ワインを造ります。
シャルドネなどの白ブドウから、梗(こう)と呼ばれる枝(えだ)の部分を取り、皮を軽く破(やぶ)る破砕(はさい)を行い、プレスして、果汁(かじゅう)と 果皮(かひ)・種(たね)に分け、果汁に酵母(こうぼ)を加えて、発酵(はっこう)させてワインとします。

ピノ・ノワール ピノ・ムニエ などの黒ブドウも同じようするのですが、果皮の色がなるべく着かないように優しくプレスし、白ワインにします。このように、品種(ひんしゅ)ごとに白ワインをつくって行きます。また、シャンパーニュは畑(はたけ)によるブドウの実の格付(かくづ)けがあるので、畑ごとにも白ワインを造っていく場合もあります。

出来上がった原酒である白ワインをブレンドしていきます。
通常は黒ブドウが7、白ブドウが 3の割合です。※1

このブレンドが実はシャンパーニュにとって重要なところ。 更なるポイントはリザーブワインという毎年残しておいた原酒です。 出来上がったばかりの原酒のブレンドに、リザーブワインを足して調合(ちょうごう)していくことで、できるだけ、毎年同じ味わいに、そのシャンパーニュのスタイルに仕上げていくのです。

ですから、シャンパーニュのスタンダードには、年号(ねんごう)がないんです。いろんな年のブドウが使われているわけですね。 ブレンドしてできたワインにシャンパーニュたる泡を加える工程をみてみましょう。 泡は炭酸(たんさん)ガスです。炭酸ガスを作り出すために、原酒ワインに蔗糖(しょとう:砂糖の主成分でもある糖分)と酵母菌(こうぼきん)を加えます。 このワインを1本1本瓶詰(びんづ)めし、栓(せん)をし寝かします。

すると、ボトルの中で、発酵がおこり、アルコールと炭酸ガスが発生するのです。瓶内(びんない)2次発酵と呼ばれます。赤・白の通常のワインつくりでは、このガスを外に逃がしていました。それをボトルの中に閉じ込めておくのです。


----------- 一方、大量生産(たいりょうせいさん)のスパークリングワインの場合は、ボトルではなく、密閉(みっぺい)したタンクの中で発酵による炭酸ガスを造ります。 ※2
約6~8週間の瓶内発酵の後、発酵の役割を終えた酵母の死骸(しがい)が滓(かす)となって沈殿(ちんでん)していきます。 その滓を取り除くのですが、ただ取ればいいというわけではないんです。

その滓が実はワインに風味をつけ、炭酸ガスを安定(あんてい)させる役割を持っています。

ですので、なるだけ滓と一緒にしておくことが必要なのですが、最終的にはその滓をキレイに取り除きます。ここで登場するのが、ピュピトルと呼ばれる、澱(おり)下げ台です。逆V字型の板にボトルの口が下向きに並べられるようになっています。上の図参照

毎日ボトルを少しずつ揺(ゆ)らしながら回転させ※3、側面(そくめん)にたまっている滓を移動させるとともに、傾きの角度を徐々に変えていき、最後には逆さまにして、滓を瓶口に集めます。

取り除く方法は、シンプルです。栓を開ける。でも、その前に、瓶口の滓がある部分だけを凍(こお)らせてまとめておきます。 栓を開ければ炭酸ガスの勢(いきお)いで、きれいに滓が飛び出していきます!※4


------------------ 大量生産のスパークリングワインの場合は、タンクなので、移し変えることにより滓を取り除けます。
 
この栓を開けた瞬間(しゅんかん)を利用して、甘味を添加(てんか)する工程を行ないます。  「門出(かどで)のリキュール」なるお洒落(しゃれ)な名前の液体を加えます。 ただの原酒ワインに糖分を加えたものなんですけど、カッコよく聞こえますね。 この糖分の量によってシャンパーニュの甘辛度(あまからど)が決まるわけです。 あとは、おなじみの独特のコルクを打ち、最低でも15ヶ月寝かせて風味を落ち着かせて出荷(しゅっか)します。


------------------ 大量生産のスパークリングワインの場合は 熟成(じゅくせい)期間は短く、造ってすぐに出荷、飲むことが出来る点が魅力(みりょく)になります。

シャンパーニュはこうして泡が造られますが、スパークリングは密閉タンクで造るものと、シャンパーニュと同じ瓶内2次発酵で造るものもあります。 シャンパーニュと同じ方法で造った場合をトラディショナル方式と呼び、ラベルにMethode traditinonnelle 又はMethode champenoise と書いてあります。

その他クレマンと言うスパークリングもあります。
クレマン・ド・ボルドー等はシャンパーニュと ほぼ同じ方法で作っています。

こちらのほうが、泡のきめ細かさ、持続性など品質的にも優れ、高い価格で取引されています。


※1 白ブドウ シャルドネ だけでつくるブラン・ド・ブラン 
黒ブドウだけでつくる ブラン・ド・ノワールもあります。

※2 発明者(はつめいしゃ)の名前からシャルマ方式と呼ばれます。

※3 ルミアージュ(動瓶:どうびん)と呼ばれます。なんと1/8ずつ回転させるのだとか。人間の手でおこなう伝統的(でんとうてき)なものと、機械(きかい)で行なうものも。

※4 口抜き。滓抜き デゴルジュマン と呼ばれます。マイナス20℃の塩化(えんか)カルシウム水溶液(すいようえき)で凍らせます。



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ソムリエの追言「ロゼワインの一般的な造りかた」

当店のシャトー・ラ・ジョンカード白ラベルと赤ラベルが
成城石井 さんで取り扱われる事になりました!

お取り扱い状況につきましては最寄りの店舗様へお問い合わせください。


ソムリエの追言「ロゼワインの一般的な造りかた」


「赤ワインと白ワインを混ぜればロゼワインができるのよね。」

「それは、特殊な例で、現在フランスでは白ワインと赤ワインを混ぜてロゼワインを作る事は禁じられています。ロゼワインの造りかたは赤ワインとほとんど同じなんです。最初に、そこからお話しましょう。」

ロゼワインの一般的な造り方

というわけで、造り方の3回目の今回は、【ロゼワインの一般的な造り方】です。

赤ワインの色・渋みがかすかについているのがロゼワインの正体です。
基本的な流れは、赤ワインの造り方とほとんど同じです。

ロゼワインも基本的に黒ブドウから造られます。
収穫した黒ブドウの房に着いている枝の様な部分を取り除き、実の皮を軽く破ります。

皮が軽く破られた実は発酵槽に入れられます。

発酵槽の中で、果皮などについた自然酵母(又は培養酵母を添加)の働きにより、
ブドウの糖がアルコールと炭酸ガスと熱に変わっていきます。
次第に、果皮・種か色素・渋みが果肉・果汁に移っていきます。

その後が、赤ワインとロゼワインの分かれ道です。赤ワインになる前に、「かもし」呼ばれる漬け込みを切り上げるのです。「かもし」が、赤ワインが5日から、週単位と長いのに対し、ロゼは半日から2、3日程度と漬け込みが短いわけです。
こうして、赤ワインとは違う 鮮やかなロゼの色合いと、ほのかな渋みがワインに生まれます。

果汁の色合いが目指すロゼ色に近くなったところで、プレスにより果皮・種と果汁に分けます。引き出した果汁は、発酵の途中である場合が多いので、そのまま果汁のみで発酵を続けます。
この発酵の進め具合で、甘辛度が決まってきます。発酵を糖分が少なくなるまで行なえば、辛口。糖分を多めに残し途中で止めれば、甘口になります。

発酵を終えれば、後は熟成、澱引き、安定、清澄、ろ過などを経て瓶詰めになります。
このような造り方の代表的なワインが、プロヴァンス地方のコート・ド・プロヴァンスやバンドール・ロゼそれにローヌ地方のタヴェル・ロゼと辛口タイプが主です。ただ他にも造り方があるのが、ロゼワインの特殊なところです。

出来上がった赤ワインと白ワインをブレンドする方法。
代表例がシャンパーニュ。フランスを始めEU諸国では認められていません。
シャンパーニュ地方だけは例外で、北の産地ゆえ、安定的にロゼワインにふさわしい黒ブドウが収穫できないと困るという理由から、認められているそうです。
南アフリカなどワインの新興国と呼ばれる地域での生産が盛んでもあります。

黒ブドウを白ワインと同じように作る方法もあります。
除梗・破砕後 すぐにプレスすることにより黒ブドウの果皮や種の成分を、
ほんの少し、果肉、果汁に移します。
その果汁を、発酵させてロゼワインにしあげていきます。
果皮・種を漬け込まないので、色も渋みも赤ワインよりも少なくなるわけです。
優しい渋みのためか、このタイプのものが甘口に作られることが多いです。
代表的なものにロワール地方のロゼ・ダンジュ(薄甘口)があります。

さらには、高級赤ワイン醸造の副産物的なセニエ法※1でつくられる方法や、
ドイツのロートリング※2と呼ばれる方法もあります。

いろいろな方法で造られるロゼワインですが、価格の手ごろな部分も魅力の一つです。
日本でもロゼワインの多くは1,000円から3,000円で手に入るものがほとんどです。
その一方で、あまり知られていませんが、フランス プロヴァンス地方のパレットや、イタリアのアブルッツオ州のチェラスオーロ・ディ・モンテプルチアーノ・ダブルッツオなどは、造り手によって5,000円から9,000円と高価格のものもあります。

そういえば最近フランスでは、その飲み易さからか、若者を中心に、ロゼワインが注目されて人気がでています!

元々南仏において、魚、野菜、お肉何でも合うと、特に生ガキなどは白かロゼです。 最近では春夏においてパリーでも欠かせない飲み物になりました。 日本ではまだまだ広がらないのは、ソムリエが勧めないからでしょう! 弊社のロゼを飲んで、多くの女性がロゼってこんなに美味しいの!?とびっくりする方が多くなりました。 弊社でも同じ作り手のロゼで薄味、濃ゆめ、クレレのコクの有るもの、と3種類用意しています。

薄めのロゼワインと濃ゆめのロゼワイン

当店大人気のロゼワイン
ラーム・ドゥ・ローズ2021年

※1 赤ワインの色合いを濃くし、風味に厚みを出すよう、少量の果汁を引き抜きます。(果皮・種に対する果汁の割合を減らすことによって、成分的に濃くなります)
その引き抜いた果汁を赤ワインにはせず、別に発酵させてロゼワインにする方法です。

※2 混醸とよばれ黒ブドウ、白ブドウを混ぜて発酵、醸造する方法

最後は少し複雑になりましたが、お分かりいただけましたでしょうか 



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ソムリエの追言「白ワインの一般的な造りかた」



ソムリエの追言「白ワインの一般的な造りかた」



「赤ワインについては解かって来たので白ワインはどうやって造るんですか?」
「前回の赤ワインの造り方に倣ってお話しましょう! 」

白ワインの一般的な造り方

というわけで、今回は【 白ワインの一般的な造りかた 】です!

前回の赤ワインの一般的な造りかたを読んでない人は、ぜひ
ホームページのメルマガバックナンバーから読んでみてください。
読んでいる人には思い出せるよう、イラストをつけてます。

ワインをつくる 醸造過程は基本的に赤ワインも白ワインも一緒です。
実際のところ何が違うのでしょうか?

ブドウ果肉ジュースを発酵させたのが白ワイン。
ブドウの果皮・種を含めたごった煮状態が発酵した液体が赤ワイン。
と捉えてみてもいいかもしれません。

では醸造の流れを追ってみましょう。

白ワインは、基本的に白ブドウから造られます。 ※1
まずは、収穫を終えた房ごとの白ブドウを機械で実(果粒)と実がついている
枝(果梗)とに分けます。※2

果粒をさらに機械で果皮を軽く破ります。※3

ここからが、赤ワイン醸造と違うところです。
白ブドウは、すぐに圧搾(プレス)されます。
皮がすこし破れた感じの 大量のブドウの粒を プレスする容器に入れます。
プレスとは、ブドウに圧力をかけて果汁を搾り取ることが目的ですが、皮・種と果汁に分ける目的もあります。
こうすることで、白ワインの爽やかな風味に、強い苦味と渋みをもたらす種・皮の風味をつけないようにします。

(一方赤ワインでは、果皮・種と果肉を分けずにまず発酵させます。
その後に、色と渋みをつけるために「かもし」という漬け込みが行われています。
これが赤ワインになる儀式なのです。)

出来上がるのは、次の2タイプの果汁です。
プレス器のなかで、ブドウの重みで自然と流れ出る果汁(フリーラン・ジュース)と、
潰してできるやや果皮などの風味が移りこんだ果汁(プレス・ジュース)。
エレガントな味わいのフリーラン・ジュースが白ワインでは特に重要です。

この果肉が潰れてできた液体こそが白ワインの素(もと)なのです。

この果汁ですが、まだまだ小さな浮遊物などが浮いてます。果皮の小さな粒子、
細かいゴミなど の滓を沈殿させて取り除くために専用のタンクなどにいれ果汁を澄ませていきます。※4

澄んだ果汁は発酵用のタンクに移され、そこで糖分からアルコール発酵させて、ワインとしていくのです。
発酵温度は、赤ワインよりも低く18~20℃です。※5

発酵タンクの中の果汁は、果皮をとってしまっています。
赤ワインの場合は、果皮・種と果肉ごと発酵槽に入ってました。

天然酵母の多くは果皮についてるので、
果汁をタンクに入れただけでは赤ワインの場合の様に発酵しないのです。
そこで培養酵母を加えて発酵をさせるのです。

力強い白ワイン造りを目指す場合、木樽の中で直接、発酵が行われることもあります。
特に新樽と呼ばれる、樽の木、焦げ目の風味が強いものを使うと、色の濃い、
バニラフレーバーの香りが強い白ワインになります。※6

アルコール発酵が終わった後は、ほぼ赤ワイン同様の流れをたどります。

ワインによっては乳酸菌によるマロラクティック発酵※7 によってまろやかさが加わります。
その後、細菌汚染や、酒石酸とよばれる成分の結晶化を防ぐため
多くの白ワインは冷却(0~-5℃)していきます。※8
こうしてワインを安定させた後、タンクまたは木樽での熟成により風味をつくりあげ、
さらに清澄し、ろ過して瓶詰め そして出荷。

輝きのある透明感溢れる白ワインが私達の手元にやってくるのです。


※1 果皮の色がつかないように果肉・果汁を取れば、黒ブドウだけからも白ワインができるのです。通常のワインでは珍しいですが、シャンパーニュなどが代表例です。ブラン・ド・ノワール

※2 除梗と呼ばれてます

※3
 破砕と呼ばれてます。除梗・破砕を同時に行う機械もあります。

※4
 滓下げ、澱下げ、デブルバージュなどと呼ばれます。

※5
 なお、それよりも低い10~15℃を低温発酵と呼んでいます。低温での発酵では、ワインに好ましくない微生物の働きを抑え、 繊細な香りと味わいをワインに持たすことが出来るもので高級白ワインに用いられる技法です。

※6
 樽発酵にすればすべて力強いワインになるわけではありません。
そのブドウの持つパワーが無ければ、樽の風味が勝ってしまい、ワイン本来の風味を味わえません。一時期のカリフォルニア・ワインがこの傾向に走りすぎたといわれています。樽熟成にも同じことが言えます。

※7
 乳酸菌によって ブドウの成分のリンゴ酸と呼ばれる鋭い酸味を柔らかな丸みのある酸にする乳酸発酵のことです。(MLF と呼ばれたりもします)
辛口白ワインの味わいの基礎となる酸味はこの過程を経るかどうかで大きく2つに分けられます。
MLFを経なければ爽やかなシャープな酸味をもつ辛口白ワイン、
MLFを経れば風味豊かなまろやかな酸味を持つ辛口白ワインになります。

※8
 一般消費者の白ワインに対するクレームの多くはこの酒石酸がらみといわれています。酒石酸の結晶は、ボトルの底や、コルクの鏡面(ワイン液体と接していたところ)に多く見られ、「ガラスの小さな破片が入っていた!」などと間違われます。
ワインを味わうには、確かに邪魔者ではありますが、人体に害はありませんのでご安心を。


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ソムリエの追言「赤ワインの一般的な造りかた」



ソムリエの追言「赤ワインの一般的な造りかた」


赤ワインの一般的な造り方




「ロゼワインって、どうやって造るんですか? 」

「 うーん、その前に赤ワインの造りかたを知るほうがより理解しやすいので、
まずは赤ワインの醸造方法から、お話しましょう!」


というわけで、今回は【 赤ワインの一般的な造りかた 】です!

赤ワインは、基本的に黒ブドウから造られます。※0
そのブドウは食用のブドウとは異なるものです。
ワイン用のブドウは、食用ブドウに比べ、
糖分と酸味のバランス、果肉に含まれる果汁の少なさから、
そのまま口にしても、美味しくありません。

また、食用ブドウをワインにしようとしても、
成分の違いなどにより私達がいつも飲んでいるようなワインは
うまくできないといわれてます。
(日本でいくつかのメーカーが食用ブドウから販売用ワインを造っている事例はあります)


ブドウの房は 実と 果梗(かこう)と呼ばれる軸・柄で成り立っています。
一粒一粒の実が果梗についていると言ったほうがわかり易いでしょうか。
まずは、機械でブドウの房を実と果梗とに分離します。
果梗をつけたままの発酵では、雑味が多くなりすぎてしまうからです。
果梗は青緑した柄の部分です。

ブドウを果梗付いたまま一房丸ごと食べるところを想像してみてください。
なんか、苦そうに感じませんか?

それに比べて、皮付きのブドウの実、は何とか食べれますよね。 ※1
その実を破砕機で種をつぶさないように、果皮と果肉をつぶします。
果実の種も噛んだことがある方はわかると思いますが、苦いです。

噛み潰した苦味は心地よい苦味なんてものではありません。
ちょうど、ブドウの実の皮を軽く破る感じです。 ※2
軽く皮の破れた大量のブドウの実が大きな発酵槽に入れられます。
ステンレスタンクだったり、樽だったりと様々な発酵槽があります。※3

すこし、難しくなりますが、化学反応のお話です。
発酵槽の中で、果皮などについた自然酵母(又は培養酵母を添加)の働きにより、
ブドウの糖がアルコールと炭酸ガスと熱に変わっていきます。
あえて、化学式など書きませんから、安心してください。
ちなみにこの化学式ソムリエ試験受ける際には、必ず覚えます。

ビールや日本酒と違って、デンプンを糖化せずに、
直接アルコール発酵ができる点が、ワインが最古のお酒たるゆえんでしょう。
要は、熟れたブドウの果実の皮が破れて、酵母菌が着けば、
自然にアルコールが出来上がってしまう、そんな感じです。

発生する熱により槽内の温度は上昇して、赤ワインであれば30℃前後になるよう温度管理 ※4 をしながら平均5日程度、発酵を続けます。

また、発酵が進むにつれ、果皮や種子などの固形物は発酵槽の上面に浮き上がってくるので、発酵槽の下方から果汁の撹拌で均一化をします。※5


無事にアルコール発酵が終了したら、液体に色と渋みをつけるため、かもし を行います。果肉には色素がありません。破れた果皮から、発酵によるアルコール・熱によって
果汁に色素が移っていきます。アントシアニンという色素です。ブルーベリーでも有名ですね。

種などからは、渋み苦味成分がゆるやかに移っていきます。
漬け込んでいるからこその成分の移行です。

また果皮からは、色素だけでなく、香りの成分も抽出されていきます。
皮を破った後や、発酵の段階でも、果肉、果汁に色素が移っていきますが、
この かもし を 経ることによって より赤ワインとしての色合いと渋みを得ます。

発酵槽の中は、果粒と果汁、ひしめき合う固体に液体が混ざったまさにごった煮状態です。※6

その液体だけを得るために、プレスする器に移し変えられます。
印象的な、乙女の足で踏んでいるイメージが湧いたりもしますが、
それは収穫祭などのセレモニーとしてのみ行われているものです。

プレスとは、ブドウに圧力をかけて、果汁を搾り取ることが目的ですが、
液体と固体とを分ける目的があります。 プレス器の中に入れた際に、沢山のブドウの重みで自然と流れ出る果汁をフリーランジュースと呼び、エレガントな風味 をもっています。

この液体を引き抜くことが大切です。
次に固形物(果皮・種)が付いている果肉部分を、プレス器で圧力をかけて、
種や果皮からの成分を多く含んだ 果汁(プレスワインと呼ばれます)を得ます。

プレスワインは、より、色味や渋みが強いのが特徴で、プレスの回数、時間によって変わってきます。※7 つまり、出てくる果汁は2タイプあるのです。
この2つを併せて目指すワインに仕上げていきます。 


しばらく後、乳酸菌によって ブドウの成分のリンゴ酸と呼ばれる鋭い酸味を
柔らかな丸みのある酸にする乳酸発酵が行われます。
落ち着いた酸味によって赤ワインの味が整っていきます。
この状態を経ないと酸の刺激が強すぎで飲めません。 ※8

ワインを安定させ、さらに飲みやすくしていく為にタンクや木樽でワインを熟成させます。※9  特に樽での熟成は、樽の成分、香りをワインに与え、空気接触により、
バランスよい飲み口複雑な風味になっていきます。

樽の木目を通して、ワインが蒸発していくと同時に熟成をしていきます。
この現象を「天使の分け前」なんて素敵な言葉に例えられてます。
天使が飲んだ部分を、補充していくのも大事な工程になっていきます。
この段階では、ワインにはブドウ成分による滓が浮遊物としてたくさん混じり、濁っています。

時間が経つにつれて、結合し、底に沈殿します。その沈殿物を澱(オリ)と呼びます。
澱の上の美味しい部分を抜き取るため、タンク・樽の移し変えが行われ、
ワインを雑味のない澄んだ味わいにしていきます。


また、さらに、その度合いを高めるため、卵白・ゼラチンなどを用いて行われたりもします。※10  この時期のワイナリーの食事は卵の黄身を使った料理が多いとか・・・   

こうして、色あい、香り、味わいなどがバランスよく整ったところで、
微生物や不純物を完全に取り除くためにろ過をして、やっとこさ瓶詰めです。※11

瓶詰め後ワインによっては、すぐに出荷するものもある一方で高級ワインの多くは
貯蔵庫で瓶熟を経てさらに味わいに風味をもたせてから出荷します。※12

そこから、長い旅路をへて、私達の手元へやってくるのです。


※0  少量の白ブドウを使う赤ワインもあります
※1  除梗(じょこう)と呼ばれます
※2 破砕と呼ばれます
    ※1・2 を 1台の機械で、破砕しながら、除梗する場合もあります。
※3  発酵槽の違いは?
・ 【木樽】ワインに風味をつけやすい、衛生管理が大変
・ 【ステンレスタンク】管理が容易、この段階では味わいに変化をきたさない
・ 【コンクリート】 コストが比較的安価

※4  温度管理の必要性? 
酵母も生き物です。温度が上昇しすぎると活動が鈍くなり発酵が進まなくなってしまいます。また、温度が高くなると、ワインの香味成分が失われてしまうので。

※5  ここまでのアルコール発酵を後の発酵※8に対して主発酵と呼んだりします。
※6  マセラシオン(仏)・マセレーション(英)とも呼びます。
※7  圧搾 という工程です。垂直式、水平式、回転式と様々なタイプのプレス機器があります。
※8  第2次発酵または乳酸発酵(マロラクティック発酵)と呼ばれています。
※9  熟成  早めに飲むタイプはステンレス、高級タイプは樽でもオーク(樫)樽を使うのが主流です。
※10 澱引き、滓引き ⇒清澄作業と呼ばれています。
※11 造り手や産地によってはろ過しない場合もあります。ろ過し過ぎれば、ワインの味わいの上で重要な成分まで取り除きかねない理由などがあげられています。
※12 樽での熟成と異なり、酸素がない熟成、還元的熟成などと呼ばれたりもします。


どうですか、赤ワインのブドウからワインへの変化、醸造がお分かりいただけましたでしょうか?
 
つい最近まで地方で多くのワイナリーでは歯車の大きなものでブドウを房ごと潰していました。

⇒当店取り扱いのシャトー・ラ・ジョンカードのワインの造り方をこちらで紹介しています。


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ワインセラーは保存に適していない?
窮屈すぎるワインセラーの空間、その理由は・・・。

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よくある質問の一つ、ワインはどんなお店で買うのが良いのか。
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日本ではボルドーとブルゴーニュはフランスの2大生産地として、ワインの双璧のように言われていますが、実際のところは?ヨーロッパでのブルゴーニュの赤ワインの評価は?

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ワインや好みによりますが、一般に売られているワインなら30分位といったところでしょうか。しかし、カベルネソーヴィニョンの割合が高いものは2時間位経ったほうが美味しい場合が多く、何と開けてから翌日の方が美味しくなっているワインも??

■ボルドーの赤ワインは他と何が違うのでしょう?

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フランス史上2度もボルドーに首都が置かれたことをご存知ですか?

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