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ソムリエの追言「知ってるようで意外と知らない!?ワインにぴったり合う料理 ~カレー編~」



ソムリエの追言
「知ってるようで意外と知らない!?ワインにぴったり合う料理 ~カレー編~」



数あるお酒の中で、カレーにもっとも合う酒は何かと問われれば、 私はワインだと答えます。

一部には、カレーとワインが合わないなんて言っている方もいるようですが、 カレーの力強く、スパイシーな風味には間違いなく赤ワインがぴったり合います。
ましてや脂味の強いマトン(羊肉)カレーなどは、赤ワインがないと食べられません。
極端な話、カレーには赤ワインしか合わないのではないかとさえ思えます。

歴史的にみても、ボルドーワイン最大の輸入国イギリスでは、18世紀にインドからカレーが伝わり、一般に普及していきました。イギリスでは昔からボルドーのワインとカレーが共に存在し、家庭でも広く食されていたのです。もちろん、現代の日本で食されているカレーとは作り方も味わいも異なりますが、カレーとワインは昔からの深い関係にあるのです。

ではスパークリングや白ワインはどうかと言えば、好みの問題ですが個人的にはあまり合わないように思います。今回このテーマでメルマガを書くにあたって、カレーとスパークリング・白ワインも実際に合わせてみましたが、味わいの繊細さや余韻の軽さから、どうしてもカレーの風味に負けてしまうようです。
スパイスで痺れた口の中では、白ぶどうの持ち味である繊細な果実味やミネラル感をあまり感じられず、お互いの長所があまり活かせないのです。

やはりカレーには赤ワイン。
しかし一言で赤ワインと言っても、繊細で華やかなピノ・ノワールではカレーのスパイシーな風味に負けてしまい、逆にカベルネ・ソーヴィニヨン主体で若いヴィンテージのワインでは、タンニンが荒々しく口の中で渋味と辛味が喧嘩してしまう場合があります。 その他にもシラーなど、スパイス香を強く感じるぶどう品種はたくさんありますが、タンニンが強過ぎたり、熟成に向かなかったり、値段が高かったり・・・手頃な値段で美味しいワインを探すのはなかなか難しいでしょう。

個人的にはメルロー主体の果実味豊かなタイプ、しかも熟成を経て複雑なニュアンスを持ったワインがカレーには合うと思います。この手のタイプはよくよく探せば比較的手頃な値段で美味しい物が手に入りますが、皆様はよくよく探さなくてもMICHIGAMIワインを選んで頂ければ、間違いありません!

営業はさておき、
カレーとジョンカード白ラベル今回は実際に、「シャトー・ラ・ジョンカード白ラベル」とカレーを合わせて食べてみました。 メルローの柔らかなタンニンが牛肉の旨み、スパイスの個性をうまく包み込み、辛味・刺激とも上手く調和しています。

ワインの果実味もカレーの風味と共にしっかりと主張しており、熟成による少し土っぽいニュアンスが、煮込んだ根野菜の甘味と相まって上質な旨みが感じられます。

さらに白米をバターとニンニクで炒めてバターライスにすれば、香ばしい香りとバターでコーティングされたお米一粒一粒が赤ワインの柔らかいタンニンと同調して旨みへと昇華していきます。バターの脂が、赤ワインのタンニンをより美味しく感じさせ、まさにピッタリの組合せになります。

こんなにワインと合うにも関わらず町のカレースタンドや専門店では、あまりワインを飲んでいる光景は見かけません、そもそもワインを取り扱っていないお店がほとんどではないでしょうか?

日本人にとって、一食500円から900円程度のイメージが強いカレーの単価と、まだまだ高いと思われがちなワインのイメージが中々結びつかないのかもしれません。 お店側も回転率を優先して、ワインのようにゆっくりと楽しむお酒を置きたがらないのも理由の一つです。

ですので、家庭で時間を気にせずゆっくりとカレーを食べる時には、
是非とも赤ワインを飲んでください!

出来れば、カレーに赤ワインを少し加える事で風味がぐっと増し、 より一層ワインに合ってきます。 この時に不味いワインを使うと、せっかくのカレーが台無しになってしまいますが、 かと言って高いワインを使うのは勿体ないので、止めてくださいね! 私はBag In Boxのシャトー・ラ・ジョンカードを使っています。

ボトルと違って、1本開けなくても必要な量だけ使えば良いので、 こういう時本当に便利です。

さらに、カレーの隠し味にコーヒーやチョコレート、バナナやリンゴ、蜂蜜などを加える事がありますが、これらの食材は不思議とワインの香りを表現する時にたとえられるものが多いのです。という事は、隠し味に使った食材と同じニュアンスを持つワインを合わせていけば、よりカレーとワインの相性を楽しめると思います。

もちろん、何もしなくても美味しく合わせられますが、隠し味を使ってカレーの風味をワインに近づけてみるのも一興です、ぜひお試しください。


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ソムリエの追言 「知ってるようで意外と知らない!?ワインにぴったり合う料理 ~焼肉編~」



ソムリエの追言
「知ってるようで意外と知らない!?ワインにぴったり合う料理 ~焼肉編~」



焼肉お肉に赤ワインが合うという事は今更言うまでもないのですが、不思議と日本の焼肉店ではそれほどワインが飲まれていません。
日本人にとって、「焼肉」という食事の位置付けは曖昧で、金額的に贅沢な食事でありながら、どこか大衆的なイメージがあります。

「ワイン=優雅に気取って」と思っている方も多く、なかなか焼肉とワインが結びつきにくいのかもしれません。 焼肉と言えば「とりあえずビール!」が圧倒的に多く、ずっとビールを飲み続ける人もいれば、韓国というイメージからか焼酎の人気も高く、チューハイやロックなど好みの飲み方で親しまれています。 ビール

焼肉の脂と、こってりとしたタレの味わいを、焼酎がさらっと流してくれることは事実です。しかし、そこから先の味の広がりはあまり期待できません。

私も数年前までは、焼肉と言えばビールを2,3杯飲んでそれから焼酎を飲んでいました。理由はお店に置いてある手頃なワインが、どれもスーパーで買えるような代物であるにも関わらず、ずいぶんな高値で販売されていたからです。
そこにお金を掛けるのであれば、そのぶん美味しいお肉を食べたいと考えていました。

最近はワインに力を入れているお店も少しずつ増えてきましたが、飲むと頭が痛くなりそうなチリのカベルネ・ソーヴィニヨンやアルゼンチンのマルベックが3,000円台、オーストラリアのシラーが4,000円台、ボルドーのカベルネ・ソーヴィニヨンなんて頼もうものなら10,000円近い値段を取られたりします。
なぜか焼肉屋さんでは、価格帯ごとに、国も品種も違うワインを一種類ずつ用意して、お客さんに”値段で”ワインを選ばせているお店が多いのです。

焼肉屋さんで安くて美味しい赤ワインを頼みたいと思っても、ほとんどのお店ではワインがすべて冷蔵庫に保管されていて、それをそのまま持ってきます。
ワインによっては少し冷やして飲んだ方が美味しい場合もありますが、冷やし過ぎた赤ワインは渋味と酸味を強く感じ、香りの広がりも小さくなります。

「脂身の強い焼肉には、すこし冷やしてタンニンを強調した方が合う」とブルゴーニュ好きの友人が言っていましたが、そんな事しなくてもタンニンの強いボルドーを飲めば良いじゃないかというのが私の意見です。

10,000円で販売しているような高いワインを、キンキンに冷やして持ってくるなんてありえません。フランス人なら怒りだしてしまいます! やはり赤ワインは18℃前後で飲むのが一番美味しく、本来の華やいだ香りと味わいを楽しめるのです。

道上曰く、「パリにある焼肉店のほとんどは、韓国人が経営しています。東京では江東区にこういうお店が多い。今では新大久保がコリアンタウンとして有名になりましたが。そして韓国人の経営しているお店の方が、ワインをしっかり扱っています。
もしかしたら彼らの方が、ワインと焼肉の相性をきちんと理解しているのかもしれません。」

イメージとしては連想しやすい焼肉と赤ワインですが、実際のところはお店側の提供レベルの低さなども影響して、いまいち浸透していないのが現状です。 具体的にその相性を見てみましょう。

赤ワインに含まれるタンニンは、焼けばしたたるほどの肉の脂味をすっきりと流して中和してくれます。さらにワインのすごいところは果実の甘みが、この脂味を旨みへと昇華してくれるのです。この相乗効果は、ビールや焼酎などの他のお酒には真似出来ません。

複雑な甘味とぴりっとした辛味をもった焼肉のタレには、合わせるワインにも果実由来の甘みと、樽熟成からくるスパイシーさ、ワイン自体の力強さがないと、濃いタレの味に釣り合わないのです。
よく南アフリカや国産ワインで、取ってつけたようなフルーティーな甘さや、 焦がしたキャラメルのような強い甘みを感じる事がありますが、これらの甘さでは、脂っこい肉とタレの風味にはあまり合わないのです。

もし赤ワインを飲んでいて、どうしてもタレの風味とワインがしっくりこないと感じる時は、タレに少しだけ赤ワインを混ぜてあげると、タレの風味がぐんとワインに近づいてくるので、より一層お肉との相性も楽しめます!もし可能なら、飲んでいるワインとは別のワインを混ぜれば、より複雑味が増して美味しく感じられます。
ぜひ一度お試しください。

風味をワインに近づけるといえば、韓国焼肉ではお馴染みのサムギョプサルも、味付けにワインが活用されています。焼く前の肉をワインに漬け込んで熟成させたワイン・サムギョプサルは赤ワインの風味を移す事で豚肉の臭みをとると同時に、含まれるアルコールが肉質をやわらかくしてくれるのです。

サムギョプサルでなくても、焼く前の肉を一時間ほどワインに漬けて置くだけで随分と美味しくなります。もちろんワインとの相性も格段に上がります。 家庭で飲み残しのワインなどがあれば、チャレンジしてみてください!

焼肉の話では、どうしても話題が赤ワインばかりに偏ってしまいますが、
はたして白ワインとの相性はどうなのでしょうか?

豊かな樽の風味があり、しかも樽香に負けないしっかりとした果実味を持った白ワインなら、塩ダレやゴマダレで食べる豚肉や鶏肉、海老などの海鮮系とうまく合わせられるでしょう。レモン汁で食べるタン塩には、同じく柑橘系のアロマを持ったフルーティーな白ワインがおすすめです。

脂身の多いカルビやロースでも、サンチェなどの生野菜で包んで食べるなら、野菜のフレッシュなミネラル感と合わせて白ワインやロゼワインも合ってきます。
シャルドネ主体でコクのあるタイプのワインがぴったり合います。

しかしその野菜に、コチュジャンのような味噌をつけて食べるなら、やはり赤ワインでないと、ワインが負けてしまうでしょう。味噌には乳酸が含まれていますが、実は赤ワインにもこの乳酸が多く、葡萄ジュースからワインになる過程で果実由来の鋭い酸味(リンゴ酸)をまろやかな乳酸に替えているのです(マロラクティック発酵といいます)。
お互いの乳酸が、旨みの相乗効果を引き出します。

味噌と言えばホルモンですが、焼肉の中でも特に脂が多いホルモン(小腸)を食べる時にはなるべく赤ワインを飲んでください、美味しく食べられるうえに赤ワインが脂の消化を助けてくれるので、次の日の胃もたれがなくなります!

キムチ 意外な組合せに思うかもしれませんが、実はサイドメニューのキムチも、ワインととてもよく合います。辛くて唐辛子とにんにくの香りの強い発酵食品ですが、味噌と同じく乳酸を多く含んでいるので、赤ワインと合わせる事によって、キムチの辛さは旨みに、ワインの酸味は鮮烈な甘味となって、見事に調和します。

ただし、長期間寝かせておいて発酵の進みすぎたキムチや塩辛がたくさん入ったものは、乳酸以外の様々な酸味が強く出てくるので、うまく合わない事があります。比較的若くて、辛さと同時に甘さも感じられるようなキムチの方が、ワインとは合うようです。ワインも熟成が進んで複雑なニュアンスが感じられる物よりも、フレッシュな果実味が先行している若いタイプのワインの方が良いでしょう。

最後に、炭火やコンロが近い焼肉店のテーブルでは、一時間ほどで適温の赤ワインが温まってしまう事があります。今回はボトルの温度上昇を防ぐ、とっておきの方法をお教えします! ワインクーラーに水だけ入れてもらい、その中にボトルを漬けておけば余程火の近くに置かない限り最後まで一定の温度で、冷え過ぎる事もなく美味しく飲めます!

最初は店員さんに怪訝な目で見られるかもしれませんが、理にかなった方法なので 堂々とお願いしましょう!

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ソムリエの追言 「知ってるようで意外と知らない!?ワインにぴったり合う料理 ~中華料理編~」



ソムリエの追言
「知ってるようで意外と知らない!?ワインにぴったり合う料理 ~中華料理編~」



道上曰く、「46年前の香港富裕層達の多くが、コニャックを飲みながら高級中華を食べていた。」 これが当時の中国人には最高の贅沢であり、接待の常識だったそうです。
昨今、それがほとんどすべてワインに変わっているようです。

中国ではワインの事を「葡萄酒(ぷーだおじょう)」と呼び、消費されるワインのほとんどは色の濃いボルドータイプの赤ワインです。 最近では富裕層に限らず一般の人々でも、紹興酒ではなく自由にワインと料理を組み合わせて、その相性を楽しんでいるようです。

中華そこで今回は、中華とワインの組合せについて考えてみたいと思います。 総じて、とろみのある料理には蒸留酒よりもワインなどの醸造酒の方が合うと思います。とは言え、量を食べる事が多い中華料理では、ビールだと胃が張ってしまい、たくさん食べられません。

紹興酒ももちろん良いのですが、ワインがもたらす料理との相乗効果、奥深い味わいは紹興酒にはない、ワインだからこそ出来る作用です。

中華料理は基本的に油をたくさん使うので、ワインに含まれる多様な酸やポリフェノールがそれを和らげ、次の一口をより美味しくしてくれるのです。


ヴィュ・シャトー・ラモットチンゲン菜や空心菜など葉野菜を油で炒め、素材を活かしたシンプルな上海料理には、グラッシーと表現される若々しい青草、ハーブのようなニュアンスを持ったソーヴィニヨン・ブランがよく合います。

さらに、柑橘類を搾ったような爽やかな酸味がワインにのっていれば、料理の味わいをより一層引き立ててくれるでしょう。 こういう野菜料理には、是非【シャトー・ラモット】を合わせてみてください。

ヴィニョーブル・ラトゥース・キュヴェ・スペシャル L同じ野菜でも広東料理に代表されるしっかりした味付けととろみをもった料理、たとえば八宝菜などは、ふくよかな樽の風味を利かせた白ワインが合ってきます。

木樽の香ばしさが野菜の旨みと合わさってエレガントな余韻を感じさせてくれるので、こういう料理には樽香豊かな【キュヴェ・スペシャルL】がお薦めです。

ブルゴーニュのシャルドネも果実味が豊かで、樽香やバターのような香りが感じられるものは特によく合います。

定番のマーボー豆腐や海老チリ、坦々麺などの四川料理は、中華の中でも特に脂っこく辛い、そして塩っぱいのが特長です。こうした刺激の強い料理には【ロゼ・ダンジュー】(MICHIGAMIワインではありませんが・・)のようなロワールの甘口ロゼワインが一番合わせやすいと言われていますが辛口のラーム・ドゥ・ローズは、辛い料理との相性をかなり楽しめます。

フランスではロゼ・ダンジューが安いテーブルワインのように親しまれているワインです。通常はよく冷やして飲むのですが、四川料理と合わせる時には、少し高めの温度でワインのボリューム感を高めた方が、料理とのバランスが釣り合います。
しかしながらこのロゼ・ダンジューは甘くてあまり美味しくはありません。
ただ四川のように辛く脂身の多い料理には甘口が合います。(道上曰く)

辛い料理に対してワインを冷やしすぎると口の中で辛みが強く広がってしまい、繊細なワインの風味をいまいち楽しめないのです。ボルドーやシャンパーニュと比べると安価で、手に入りやすいのもポイントの一つです。ただこれも好みで冷やして飲むのも結構だと思います。

ラーム・ドゥ・ローズそして、【ラーム・ドゥ・ローズ】は、トマトやピーマンのような野菜の香りと、高いミネラル感に溢れているので、チンジャオロースやホイコーローとの相性が抜きん出ています。ロゼのやさしいタンニンが、脂っこさや濃い味付けをさらっと流して口の中をすっきりと引締めてくれるのです。


中華の代表的な調味料オイスターソースを使った肉料理には、熟成を経て複雑な土の香りが感じられるボルドーの赤ワインが本当によく合います。オイスターの枯葉や湿った土の香りと味わいはボルドーの、特にメルローを多く使用した赤ワインとの相性が抜群です。

樽香の強いタイプのワインには、「鶏肉とカシューナッツの炒め物」のような、木の芽を使った料理との相性も楽しめますね。
シャトー・ラ・ジョンカード赤北京ダックに使われるテンメン醤(中国で使われる甘辛い味噌)を使った肉料理には、熟成によって複雑な甘味と力強い味わいを兼ね備えたボルドーのカベルネ・ソーヴィニヨンが最高です。ここはやはり、【ジョンカード赤ラベル】でしょう。

料理の東西を問わず、脂身のしっかりとした肉料理には、どっしりとしたフルボディーの赤ワインがないと食が進みませんからね。

20年前道上曰く、「世界中、特にヨーロッパでは中華料理といえばワインが当たり前」との事ですが、日本では高級中華料理店を除いて、中華のお店でワインを飲んでいる方はほとんど見かけません。中華は紹興酒で食べたいと思ってもフランスにはろくな紹興酒が置いてなかったりする、なぜならワインに負けてしまっているから。それも「超」がつくような格式の高いお店では、1本何十万円もするようなボルドーの格付けワインを扱っていますが、デリケートな年代物の高級ワインが中華料理と合うとは思えません。

そもそも日本では、未だワインを用意しているお店自体が少ないというのが現状です。

仮にワインを置いていたとしても、凡庸なワインに対してですら、目玉が飛び出すほど高い値段が付いていたりするので、こうした現状を見るにつけ日本では中華料理とワインがまだまだ一般的ではないのだと痛感します。私はむしろ、気軽にワインが飲めない中華料理屋さんなんて行きたくないのですが。

特に中華料理は大人数で食べる機会が多いので、ワインも様々な物を注文して料理と合わせられれば嬉しいですね。小人数で一種類のワインなら、ボルドーの赤があればOKです。

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ソムリエの追言「恐れるな!ホストテイスティング」


ソムリエの追言
「恐れるな!ホストテイスティング」



「テイスティングはいかがいたしますか?」

レストランでボトルを注文すると、ソムリエが抜栓したコルクのにおいをくんくん嗅いで二、三回頷いた後に言う、お決まりのセリフです。

注文したワインに、ブショネなどの劣化がないかどうかチェックする場面ですが、このホストテイスティング、ワイン入門書などでは「儀式的な要素が強く、色・香り・味をささっとチェック(する素振を)して、にっこり頷けばOK」とか「男を上げるチャンスです、スマートにこなして出来る男をアピールしましょう!」という様な事が堂々と書かれています。

確かにここで、ワインについてのウンチクなど長々語るのはあまりお勧め出来ませんが、香りと味のチェックはしっかり行った方が良いでしょう、というより行うべきなのです!

テイスティングと言っても、ワインが劣化しているかどうかを見るだけではありません。ちゃんとした飲み頃の温度で提供されているかどうか、これをチェックする事が非常に重要なのです。冷蔵庫からそのまま冷たい赤ワインを持ってくるようなお店もありますが、冷やしすぎのワインでは味も香りもするどくとがっていて、ふくらみや余韻も小さく、劣化をチェックしようにもそのワインがどういう状態なのかよく判りません。

逆にエアコンや調理場の近くに置かれたボトルは温まっていて、生温かくぬるりとした質感や、ひどい時にはむせ返るようなアルコール臭を強く感じます。この状態でテイスティングと言われても困りますが、そもそも生ぬるいワインなんて飲んでも美味しくありませんよね。

最初にボトルを注文した時にお店の方が「ご注文いただいた、シャトー〇〇 2000年です」とボトルを持ってきてくれたら、そっとボトルに触れてみるのも一つの手です。直接手で触れればある程度の温度が分かり、適温のボトルと交換してくれるかもしれません。

シャンパンクーラー在庫はすべて冷たく(温かく)なってしまっているという事であれば、冷えすぎたワインはしばらく置いておくか、デキャンタージュをすれば多少温度も早く上がります。逆に温まってしまったワインはシャンパンクーラーで5分程冷やせば、随分味が締まって美味しく飲めます。

赤ワインだからと言って、シャンパンクーラーに入れる事をためらう必要はありません、要はせっかくのワインを美味しく飲めるかどうかが一番重要なのですから。

代表的な劣化のブショネ、皆様も耳にした事があるのではないでしょうか?
レストランでのワイン劣化はほとんどがこれです。

ブショネの発生率はコルクの品質が低かった昔のワインに多く、コルクの品質向上やシリコンコルク、スクリューキャップの普及で減少傾向にあるようですが、それでも世界全体では20本に1本程度の割合で発生すると言われています。

その一方で「今までブショネに当たった事がない」と答える消費者が全体の過半数で51.4%、「50本飲んだ内の1本程度」と答える消費者が44.7%という結果もでています。多くの人がブショネに当たっても、気づかないもしくは「何かおかしい」と思ってもそのまま飲んでいるという事になります。 私の感覚だと30本に1本ぐらいの割合でしょうか、統計の数字が正しければ私も何本か見過ごしているという事ですが・・・。

確かにこのブショネの香り、経験してみないとなかなか判りづらいものです。 詳しい人から「これがブショネです」と劣化したワインを2、3回教えてもらえれば感覚として覚えやすいのですが、ワイン指南書には「コルク臭、腐ったコルクの臭い」なんてぶっきらぼうな説明がされています。

古本屋 これでは「果物はフルーティーな香りがします」と言っているのとあまり変わらないですね。そもそも腐ったコルクの臭いなんて、嗅いだ事がある人の方が少ないのではないでしょうか?

劣化にも程度があるので、それがワインの個性なのか劣化なのか判別が微妙なものもあれば、明らかに劣化と判るものまで差があります。

私なりに説明すると軽度のものから、「部屋干しした生乾きの洗濯物→神保町の古本屋さん→雨に濡れて放置された段ボール→影干しした雑巾」といった具合に段階分けして捉えています。

軽度のブショネは特別な異臭がするというよりも、本来感じられるべき香りや果実味が極端に低い、こもったような感じがあります。 ソムリエとして働いていた私が言うのはおかしな事かもしれませんが、実はコルクの臭いだけでブショネと判別できるような極度の劣化ワインには、滅多に出会いません。

上の表現でいうと濡れた段ボールあたりからはコルクを嗅いで発見できますが、実際ほとんどの劣化ワインは飲んでみないと分からないというのが本音です。

つまりソムリエのコルクチェックをパスしたワインでも、劣化している可能性は十分にあり得ます。 ただし抜栓したてのワインは健全な状態であっても香りが十分にたたない(香りが閉じていると表現します)場合があるので、軽度のブショネと判断がつきにくいかもしれません。

空のグラス香りが閉じているワインと、劣化によって香りが失われているワイン。

この二つを見分ける方法ですが、私はテイスティングで少量注がれたワインを飲んだ後に、少しおかしいと感じたら空になったグラスをもう一度嗅ぐようにしています。この時に木の香りに混じって少しカビくさい、湿っぽい香りが残っていれば、ブショネと考えられます。

単純に味の好みと違ったという理由ではなく、そのワインが劣化したものであれば健全なボトルと交換してもらえます、勇気をもって店員さんに確認してみましょう!

また、コルク臭も通常の香りと同様に酸素に触れる事で香りが強くなるので、デキャンタージュした後でも少しおかしいと感じたら引け目を感じる必要はありません、勇気をもって訴えましょう。

お客様から指摘を受け、担当者が自分でも確認してみて「その通りだ」と感じた時にはさっとボトルを交換してくれる、この柔軟性がレストランには欲しいですね。
確認々々で新しいボトルが出てくるのにやたらと時間がかかったり、なんだかんだと理由をつけてボトルチェンジを断るような店には「二度といくものか!」と思ってしまいます。

本来レストランなどで食事をするのに、こちらが色々と勉強して知識を蓄えなければ相手にされないというのは本末転倒です。

良いお店ほど、何も知らずに来店されたお客様が快適な時間を過ごせるようなサービスをしてくれるはずです。テイスティングのやり方が解らなければ、そのお客様に恥をかかすことなく対応してくれるでしょうし、注文の仕方が分からなければさりげなくアドバイスしてくれるでしょう。

お店の品格や値段が高いのは結構ですが、従業員の態度まで高飛車では、楽しい食事は望めないですね。よく格好つけてコルクを抜いた後、コルクの匂いを嗅いでいる店員さんの姿は何とも滑稽なものです。



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ソムリエの追言「ボルドーワインの名声を高めた歴史的結婚? 」


ソムリエの追言
「ボルドーワインの名声を高めた歴史的結婚? 」


時は12世紀半ば、フランスは修道士になりたがったほど敬虔で真面目な
カペー朝ルイ7世によって統治されていました。

といっても、シャンパーニュ地方とその近辺のごく一部の地域です。
その妻であったボルドー地方の(通称アキテーヌ皇女)エレオノールの領有地はルイの3倍、現在のフランスの4分の1の面積を有するものでした。

さて、敬虔王ルイに対しエレオノールは奔放な性格。
二人の性格はやはり合わず、離婚。
なんと3ヵ月後にエレオノールは11歳も年下(!)のアンジュー伯アンリと恋に落ち、 電撃婚したのです。
そして2年後、アンジュー伯アンリはイングランド王をも継承し、
プランタジネット朝の始祖となるヘンリー2世に即位しました。

まさに棚からぼたもち。
エレオノールにおいてはフランス王妃の後、イングランド王妃となり、2つの王朝の王妃を経験した稀有な存在です。

この結婚によって、フランス国王の臣下でもあるイングランド王ヘンリー2世は 南はピレネーから北はスコットランドに接するまでの広大な領土を治めることになり、 ボルドーのワインはイギリスに広がっていくことになりました。

それまで不味いワインを飲んでいたイングランド人は、
ボルドーのワインに大喜びしたといいます。

ボルドーのネゴシアン=ワイン商は国王により税金を免除され、
アングロ=サクソンが好きだったクレーレ(クラレット)と呼ばれる当時のボルドーワインが 大量にイギリスに供給されたからです。
この歴史的結婚がボルドーのワインの名声を高めるのに一役買ってくれたのです。

ヘンリー2世とエレオノールは8名もの子供をもうけましたが、 イギリスとフランスの広大な領地を見るヘンリー2世とエレオノールは別居が多く、後離婚。
父母両陣営に分裂した子供を巻き込んでの王位継承の確執を引き起こしました。

最終的には二人の愛が冷めた頃に生まれ、
父であるヘンリー2世に溺愛されたジョンがプランタジネット朝を継ぎましたが、
彼は失政王・失地王として有名です。
なぜならイングランドにおける大陸の領土をことごとく失ったからです。
ほかにも目の当てられないような失政は数知れず。
ジョン王の後、ジョン王2世・3世が出てこないことからもその愚業が察せられます。

ただし、ボルドーに関しては、商品を手厚く優遇した大恩人といえるでしょう。
ボルドー商品に特権を与えて、ボルドー以外の地域のワインの11月と12月の出荷と販売を禁止しました。
ワインと引き換えにイギリスからは織物、食料品や金属資源が入り、
ボルドーはますます栄えていったのです。

ブルゴーニュやシャンパーニュ地方のワインを愛するフランス王に対して、
エレオノールやヘンリー2世はボルドーとロワールのワインを愛飲していたのです。
カペー朝のシャンパーニュ、アキテーヌ公のボルドーと南西地域、アンジュー伯のロワール。
どれもワインの産地ばかり。フランスの歴史とワインの深いつながりを感じざるをえません。

エレオノールはルイ7世とヘンリー2世との間に合計10人の子供をもうけ、
70歳になっても息子達のことで各地を奔走。
84歳まで生きました。ものすごいバイタリティです。
まさに歴史の影の主役である女傑といえます。 

ボルドーをイギリスへ広告してくれたヘンリー2世とエレオノールに乾杯!


道上の追記:
Guillaume le conquerant (ウイリアム1世)ノルマンディー公(1027~1087)は
イギリスを攻めイギリスを領土にしイギリスでフランス語を強要したと伝えられている。
世界の貴族上流階級でフランス語が使われる習慣はこの頃から始まりました。

当時イギリスでは豚(pig)は食べなかったのが
フランスの食習慣からイギリスでは食事で豚をフランス語のポークと呼ぶように成りました。
フランス語のgrapeグラップ(英語読みでグレープ)が ドーバー海峡を渡ると乾燥して 干しぶどうに。今でもイギリスでは 干しぶどうをフランス語のレーズン(raisinフランス語のレーザン)と呼びます。

以前にも、ワインは陶器の入れ物に入れられ馬車で運ぶものだから
割れ易く陸路よりも水路によって発達しましたと書きましたが
この頃からボルドーワインはイギリス経由で世界に普及されるきっかけをつかんだのです。
だから未だにフランスよりもイギリス、ニューヨークで買ったほうが高級品は安い場合が多いと挙述しました。



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バックナンバー( 最新5話分)

■コルクを抜くまでの保存方法や温度管理は?

ワインセラーは保存に適していない?
窮屈すぎるワインセラーの空間、その理由は・・・。

■ワインの上手な購入方法を教えて!

よくある質問の一つ、ワインはどんなお店で買うのが良いのか。
コストパフォーマンスの良い仕入れとは?
沢山種類を置いてあるお店のワインは高い?その理由とは・・・。

■ワインはご飯のようなもの?

フランス人は多くの日本人が毎回違ったワインを首をかしげながら飲む姿を見てびっくりしています。
日本人は毎回毎回違うお米を買うでしょうか?多くの方はお好みのお米があります。
同じようにワインも同じものを飲み続けることでワインに対する基準ができるようになります。

■ボルドーとブルゴーニュ

日本ではボルドーとブルゴーニュはフランスの2大生産地として、ワインの双璧のように言われていますが、実際のところは?ヨーロッパでのブルゴーニュの赤ワインの評価は?

■ワインは栓を開けてからどのくらいの時間美味しく飲める?

ワインや好みによりますが、一般に売られているワインなら30分位といったところでしょうか。しかし、カベルネソーヴィニョンの割合が高いものは2時間位経ったほうが美味しい場合が多く、何と開けてから翌日の方が美味しくなっているワインも??

■ボルドーの赤ワインは他と何が違うのでしょう?

ワインの歴史、生産量、どれをとってもボルドーは世界を圧倒しています。
フランスにとってそしてヨーロッパの歴史においてボルドーは大変重要な都市です。
フランス史上2度もボルドーに首都が置かれたことをご存知ですか?

ソムリエの追言「冬にはやっぱりタルトタタン」


ソムリエの追言
「冬にはやっぱりタルトタタン」



寒い冬は、りんごの美味しい季節。
皆さん、りんご菓子はお好きですか?

冬の果物だけあって、アップルパイなどよく温かいデザートになりますよね。
なかでも、私のお気に入りは、、、
タルトタタンです!

煮詰めた大きなりんごがゴロゴロのっているタルトは
温めて冷たいアイスクリームや生クリームを添えていただきます。

タルトタタン
そのため、パティスリー(ケーキ屋さん)ではあまり売られず、
家庭以外ではレストランやカフェでデザートとして目にします。
面白いのは店によってカラメリゼの色味や大きさ甘さにかなり差があることです。

悲しいかな、いけてないお店も東京では実際多いのです。
こんなちっちゃいのタルトタタンじゃないわよぉぉっ!
といいたくなるような上品なものにもしばしば出くわします。

その点、最近増えてきたフランスのカフェですっ!
と主張するような店はあまり外れません。
この点はヴァン・ショと同じですね。

さて、我が麗しのタルトタタン♪その起源は19世紀のロワール(ソーローニュ)にあります。 その名のとおり、タタンのタルト。(タタンとはおばさん、叔母さんの意) 小さいレストラン&ホテルを営む姉妹が発明してくれたものです。
ある日、料理を担当していた姉ステファニーが

1.りんごを煮詰めすぎたのをリカバリーするためにタルト生地を被せて焼いた。
2.タルト生地を敷くのを忘れてりんごを鍋に入れてしまったので上から被せて焼いてみた。
3.慌て者の叔母さんが表と裏をひっくり返してオーブンに入れたところ偶然厚手の美味しいアップルタルトが出来た。

など諸説あります。

いずれにしても偶然の産物で、ほっぺたが溶けて落ちちゃうような美味しいデザートができました。
ありがたや、ありがたや。
その美味しさ目当てでホテルは繁盛し、ついにはあのパリのマキシムの看板デザートに!まさにデザート界のフレンチドリーム!瞬く間にフランスを代表するお菓子になりました。

皆さんも作ってみてはいかがでしょうか。日本でならやはり紅玉がお勧めです。
「作るのはちょっと」という方は手軽くカフェに行ってみてはいかがでしょう。
大きくてもりんごならほとんど水分でさっぱりしているのできっと平らげられるはずですよ。

私の思い出のタルトタタンは、寒ーーーーーい2月のオルセー美術館の入り口のところにあるカフェのタルトタタンです。
美術館を窓越しに眺めながら、冷えた身体を温めてくれる甘さと、
乾燥した喉を潤してくれるリンゴの果汁が最高で、身体にすーっと染みわたった感覚を今でも思い出します。
その日はオルセー美術館で印象派の絵画を見ました。
初めて見る絵だけではないのに、学校で覚えたての印象派美術史の知識と一致していつになく興奮していました。
そのおかげで感覚が普段より冴えていたのかもしれません。

セーヌ川からの切るような風の冷たさと、どんよりしたグレーな空と、
街の独特の匂いとクラクションの音が今でも鮮烈に思い出せます。
ルノワールならきっと「ムーラン・ド・ラ・ガレット」ならぬ「カフェでタルトタタンを食べる女性」なんて絵を描いていたかもしれない。ぷっ。
といってもあのムチムチしたお色気は私には足りないから、モデルには程遠いな。

思い出話はさておき、皆さんも寒い冬にあったかデザートでポカポカ幸せになってくださいね♪

ではレシピです。
本場のレシピなので甘すぎる場合はお砂糖を控えめに♪

市販のパイ生地 1枚
きれいなリンゴ 6個
無塩バター 60グラム
角砂糖 100グラム
(日本のレシピでは砂糖60グラムくらいが普通です)

トッピング用
シナモンやレモン果汁 少々
刻みバター 20グラム
砂糖 20グラム

1)角砂糖とバターを型に入れ(オーブンにかけられる鍋でもよい)火にかけてカラメルをつくる。砂糖がカラメルになり焦げてきたら、一旦火から外す

2)リンゴの皮を剥いて芯を取り除き、4つか6つに切る。
  リンゴを型の中にきれいに並べる。最下面はリンゴの皮面
(ひっくり返したときにキレイだから)になるようにし、
   2段になる場合は上の段を下の段の向きと逆に並べる。

3)シナモンやレモン果汁、刻みバターを 入れて中火にかける。

4)底がキャラメル色になるまで焦げないように20分位煮詰める。←ここがもっとも味のポイント!

5)200度のオーブンで10~15分焼く。(フランスのレシピではここはない)

6)パイ生地を広げておく。

7)火傷に気をつけて、オーブンから型をとりだし、手早くパイ生地を被せる。

8)生地が膨らむのを防ぐ為、竹串やフォークで生地にまんべんなく穴を開ける。

9)200度のオーブンで20~25分焼く。(フランスのレシピではここで210度で30分焼く)

10)お皿を被せてひっくり返せばできあがり!


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