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ソムリエの追言「ワインの金賞」


ソムリエの追言
「ワインの金賞」


ワインの金賞金賞ワインショップや通販をみると、【××コンクール金賞】とか【〇〇金賞受賞】と書かれた札を首から下げたボトルや、ラベルに金や銀のメダルがたくさん貼られたワインをよく見かけます。

そんな金賞ワイン、試しに飲んでみると「これが金賞??社内のノド自慢大会じゃないんだから・・・」と思わず疑ってしまうようなクオリティーの低いワインに往々にして出会います。

業者向けの試飲会に参加しても、生産者やプロモーターは、ワインの味わいや品質の話云々よりも開口一番、どこそこの品評会で優勝したとか多くの受賞歴があるとか・・・そういうPRをする事が多いように感じます。 いったいワインの品評会は世界中にどれくらいあるのでしょうか?
はたしてその信頼性は??

今回は、そんな金賞ワインの真実に迫りたいと思います。

氾濫する金賞ワイン 世界中で金賞・銀賞と名乗るワインは異常なまでにたくさんあります。
有名なコンクールを挙げれば、

パリ農作物コンクール、アキテーヌコンクール、ブリュッセル国際ワインコンクール、国際ワイン&スピリッツコンペティション、ヴェネチアワイン品評会、チャレンジインターナショナル・デュ・ヴァン、 モンドセレクション、カナダワインフェスティバル、ヴィクネロン・インディペンデント、アデレートワインショー・・・・・・。

これらの大きなコンクールでは、一つの大会から金賞ワインが10本も20本も選ばれているのです。スポーツで言えば県大会の表彰台に何十人もの人がぎゅうぎゅうになって、それこそ満員電車のように押し合っている、現状のワインコンクールはそういう状態なのです。

逆に規模の小さい、町内会の集まりのような品評会もあります、ワインが作られている国や地域であればどこへ行っても、その地方独自のワインコンクールがあります。品評会これらの品評会では、仮に出品されたワインが2本しかなくても、その中から金賞・銀賞が選ばれていきます。

そうした品評会では、地元のお祭り的なニュアンスが強く、一概には言えませんが、品質の良し悪しだけでワインが選ばれているとは限りません。

そして毎年、フランス国内だけでも1000本、世界全体では恐らく5000本以上の授賞ワインが誕生していると予想されます。

なんのための金賞? ではいったい、金賞ワインは何のために作られたのでしょう?
フランスをはじめヨーロッパの国々では、ここ30年あまりの新世界(アメリカやオーストラリア、南米などのワイン新興国)の台頭でマーケットは大混乱、厳しい時代を迎えています。

ボルドーのトップシャトーやブルゴーニュの名門ワイナリーのように、 世間に名高い名声を築いた生産者を除き、 その他のワイナリーが自社のワインで市場に切り込んでいくのは並大抵の事ではありません。

ネゴシアン(問屋)や農協は、ワインをどうやって販売していくか、どうすれば売りやすいのか・・・様々な知恵を絞ります、そこで登場するのが、金賞ワインです。
ワインを品評会に出品して金賞・銀賞を付けさせれば、注目が集まる・・・。

つまり、消費者に良いワインを分かりやすく伝えるという発想よりも、
業者側が売りやすくなる、販売ツールの一つとしての意味合いが強いのです。

皆さんは婚約指輪は「給料の3か月分」・・・。
すっかり常識的な慣習として扱われていますが、
実はこれは日本だけの慣習です。

1970年頃に南アフリカのダイアモンドの鉱山会社が、
日本でのプロモーションに際し提唱したもので、全ては販売目的でした。
同じように誕生石も、20世紀初頭にユダヤ人(マーケティング会社)が提唱したものです。

日本でのバレンタインの中身は皆さんもご存知でしょう。

ワインの金賞と言う物も、順番で言えば同じような物で
今は「マーケティングの為」と言う前提で作られているものがほとんどなのです。

実際に品評会に出品しているのは、無名のワイナリーが多いのです。
仮に、ボルドーのグラン・クリュ・クラッセに名を連ねるシャトーが金賞を受賞したとしても、これ見よがしに喧伝するようなところは一つもありません。

それは、自分のところの品質とネームバリューで十分だからです。
いまさら金賞なんて派手な衣装でワインを着飾る必要がないのです。

それでも、200種も300種もワインを扱っているような大きな会社では、
全商品をきちんとテイスティングして品質の良いものだけを販売していくのは
現実的に難しいので、分かりやすさ売りやすさから金賞ワインを販売しているのです。

テイスティングで選んだワインがたまたま金賞ワインだった・・・というのであれば、
何の問題もありませんが、「××コンクール金賞受賞」というキャッチコピー、
売りやすさだけで商品を選び、信頼性もコストパフォーマンスも低いワインばかり薦めてくる販売店や通販業者は、すでにお客様の方から見放されつつあるようです。

商品の情報がほとんど無い中で、何とか美味しいワインを探したいとの一心で、
金賞シールに期待してワインを買っていかれるお客様の事を思うと胸が痛みます。

道上の独り言
金賞ワインの展示会に行ってまともに飲めるものは少ない。
コストパフォーマンスの悪さは賞賛に値する。


⇒ お得、楽しい頒布会、詳細はこちらからどうぞ

お申込みは3月一杯、年間でこの時期のみの募集となります


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ソムリエの追言「ワインの入港」


ソムリエの追言
「ワインの入港」



倉庫内MICHIGAMIワインはフランスから直接輸入をしています。

船便で入港し,積み下ろされ税関を通過したワインは、保管倉庫へと運ばれていきます。その保管倉庫に行きワインの検品を行っています。つい先日、新たにフランスよりワインが到着しましたので行ってきました!

商品のダメージや本数の確認はもちろんですが、 一番の目的はトラックから降ろされたリーファーコンテナ(冷却・保温機能を備えた大型の貨物箱)の開封に立ち会うという事です。

長い船旅の途中で冷却機能が故障していたり、コンテナの中には錆びて穴が開き海水が入り込んでいたりする事さえあるからです。

コンテナの扉を開ける瞬間、ぴんと張り詰めた緊張が走ります。お客様の顔が浮かびます。 万が一、冷却装置が壊れていてワインに劣化がみられた場合、そのワインは安く叩き売るか処分するかの二つしかないのです。

断熱シートコンテナの二重ロックを外して重たい扉を開けると・・・暗闇の中ブゥーンというモーター音とともにひんやりとした冷気が・・・冷却装置は正常に作動しており、まずは第一段階クリアーです。

パレット(台木)の上には銀色の断熱シートで包まれたワインがぎっしり積み込まれています。

道上はワイン輸送の際にリーファーコンテナを使い、さらに冷却機能が故障した場合に備えて、必ずコンテナ内に断熱シートを被せるよう指示をしています。その断熱シートにも破損がないか隅々までチェックをします。

さらに、これはちょっと裏技的な方法ですが貨物船にコンテナを積み込む際には船底のスペースに置いてもらえるようお願いしているのです。 航海中に赤道直下を通過する際、船内は50℃を超える場合がありますが、海水に近い船底は温度の影響をあまり受けず、また航海中の揺れが一番少ないのです。

新しい箱になったジョンカード!
ワインをシャトーから港まで運び、船へ積み込むのに約2週間、船便がフランスの港を出港して日本に到着するまでに約3週間から5週間かかります。お客様の早くしろと言う声が聞こえてきます。

ワインは急激な気温の上昇に弱く、ビン内のヘッドスペース(ビン内の液面とコルクの間) の空気の体積が膨張すれば、中から押し上げる力でコルクが浮き上がったり、ワインが染み出してしまう事があります。

ワインが目減りした分、コルクと液面の間のスペースは大きくなるので、そのスペース分の空気が酸化熟成を急速させ、 ワインの劣化につながる恐れがあります。

また この液漏れによって(通称ワインが噴くと言う)ジャムっぽい香りと酸味か強まります。

ワイン 動いているフォークリフトの間をすり抜けながら、さっそく積み下ろされたワインから検品を始めていきます。

注文した通りの本数来ているか、破損やラベルの汚れ、液漏れがないかどうか。



ワイン次に検品を終えたワインを数本、倉庫からオフィスに持ち帰って品質のチェックを行います。

一般的に、船旅などの長い移動を経てすぐのワインは、振動や揺れにより味や香りの成分が不安定な状態で、 バランスが悪くタンニンなどの収斂味を強く感じる事が有ります。

これは色素やタンニンが固形化した澱が液中に舞っているからという単純な問題だけではなく、澱の生じていない若いワイン、 白ワインやロゼワインにも同様に言われている事です。 長いワインの歴史の中で自然と生まれてきた経験則のようなものなのでしょう。

私自身、海外から到着してすぐのワインにはどこかアルコールの抜けてしまったような軽さや、 ギスギスとした強い収斂味を感じる事が多いです。

一方で道上曰く、”シャトー・タランスはボルドーで飲むとシャトー・ラ・ジョンカードより美味しいが、日本に到着してから飲むとジョンカードの方が断然美味しい。 最初、違うものを入れて送ってきたんじゃないかと怒った”と。 実はタランスは揺れに対する抵抗力のないデリケートなワインだったのです。

通常ワインはビン詰めの前にフィルターをかけて濾過するのですが、道上は苦肉の策でタランスにフィルターをかけないで日本に送ってくるように指示しました。 そうする事でやっと味わいにコクが出てくるようになったそうです。 このワインはホテル・オークラで長年愛飲されました。

昔、樽を船にのせてわざわざ揺らしてから陸に戻す事もありました。
これは、アルコール度数の高い強いワインには当てはまる出来事だということです。

すでに何百回も行っている入港作業ですが毎回、隅々までチェックをし、問題があれば細かい事でも海外の業者に直接指摘をし、改善をさせています。 時には中々受け入れてもらえない事もありますが、 より安心で美味しいワインをお届けする為に、長年の輸入経験を活かして妥協のない入港作業を行っています。

お申込みは3月一杯、年間でこの時期のみの募集となります


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ノムリエの追言「格好良く食事するには(マナーは)?」


ノムリエの追言
「格好良く食事するには(マナーは)?」


毎年3月又は4月に スイスのバーゼルという町で世界最大の
ジュエリー・ウォッチ・フエアーが開催されます。

45年ほど前に フランスの美人ファッション・コーディネーターの方に
「今日一日の来場者で一番おしゃれな方は?」
と質問すると、「ある日本人の男性でした。」と言われ・・・・?。
日本人も此処まで来たかと 唸った事が有ります。

私は60年前位に多くの日本人がくたくたの洋服に肩からカメラを
2台ほどぶら下げて首を振り振り歩く姿を思い起こし、
本当かなあと何度も聞き返しました。

おしゃれな人は増えました。しかし格好は如何でしょう?

パリー・ニューヨークの人は歩くのが早い。そして格好が良い!
そうです。歩き方教室へ行かなくとも早く歩けば歩き方は自然と綺麗に成ります。

オリンピック100メートル選手の走り方はまさに様式美そのものです。
つま先を蹴リ出す様に踵から着地。走るのも歩くのも同じです。

食事も同じです。
どうも日本人は食事をさっさと食べたらごろりんと横になる人が多いイメージです。

フランス人の食事姿はエレガントに見える事が多いのは何故でしょう?
歩くのも座るのも姿勢が良いのです。

テーブルの縁の真下に椅子の縁が来るように位置づけ、
椅子の半分に腰掛けます。決して椅子の背にもたれません。
もたれても良いのは 御老人です。
その代わりどなたかが椅子を引いてさしあげなければなりません。
そうでないと敷物(カーペット)を傷めてしまいます。

椅子の半分に腰掛けますと、丁度テーブルの縁にお腹がつきます。
背筋が真直ぐになり食べている物が落ちても真下でお皿が受けてくれます。
手は下におかず手首から肘迄の中間がテーブルの縁にくるようにします。  
手を膝の上に置くと隣の女性の膝を触っているのではないかと勘違いされますのでご用心!

椅子 座り方

ナイフ・フォークは端から。グラスも手前から。
あくまでも下げ易さの為です。

ナプキンは右膝にかけるのみで食べた後軽く口を拭く。
グラスに匂いや油を着けないためです。
ワインは先ほど食べた物の味を消すためですが、実はこの瞬間が美味しい!
最近まで殆どのフランス人は食事中以外ワインを飲まない。
私もそうです。

そして多くのフランス人はワイン無しで食事する事は出来ませんでした。
ワインは調味料のような物でワイン無しで料理を食べるのは
味の付いていない料理を食べるようなものなのです。

そしてフランスでは肉以外はナイフを使いません。
高級な所へ行けば魚用のナイフは出ますが、一般には野菜を
ナイフで切ることはしません。
右手にフォーク 左手にパンです。
5センチ程度にちぎったパンを添えて野菜を食べます。

ですからレストランでテーブルに座ってパンが無いと 
オオーイ !箸が無いぞ!と思えてしまいます。
パンが別料金と言われますと、この店は箸にもお金を取るのか、
となってしまいます。

我々が子供の頃、食事は黙って食べなければいけませんでした。
ヨーロッパもそうでした。最近は如何でしょう?
話好きのフランス人は 食べることの何と早いことでしょう!
飲み込むように食べるくせに テーブルにいる時間は長いようです。
あそこが美味しい此処が美味しいの後はノンポリの政治論に花が咲きます。

ところで両手をテーブルの上というのはご存知の通り、
昔は拳銃を持っていない証明であり、グラスの縁にあとを
残さないのは回し飲みをしていた習慣の名残です。
武士が刀を納めお茶を回し飲みする様子と重なります。

とにかくマナーの話はきりが有りません。
長い歴史の中で積み重なった、気配りの数だけマナーが存在するのですから!


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ソムリエの追言「冬にはやっぱりタルトタタン」


ソムリエの追言
「冬にはやっぱりタルトタタン」



寒い冬は、りんごの美味しい季節。
皆さん、りんご菓子はお好きですか?

冬の果物だけあって、アップルパイなどよく温かいデザートになりますよね。
なかでも、私のお気に入りは、、、
タルトタタンです!

煮詰めた大きなりんごがゴロゴロのっているタルトは
温めて冷たいアイスクリームや生クリームを添えていただきます。

タルトタタン
そのため、パティスリー(ケーキ屋さん)ではあまり売られず、
家庭以外ではレストランやカフェでデザートとして目にします。
面白いのは店によってカラメリゼの色味や大きさ甘さにかなり差があることです。

悲しいかな、いけてないお店も東京では実際多いのです。
こんなちっちゃいのタルトタタンじゃないわよぉぉっ!
といいたくなるような上品なものにもしばしば出くわします。

その点、最近増えてきたフランスのカフェですっ!
と主張するような店はあまり外れません。
この点はヴァン・ショと同じですね。

さて、我が麗しのタルトタタン♪その起源は19世紀のロワール(ソーローニュ)にあります。 その名のとおり、タタンのタルト。(タタンとはおばさん、叔母さんの意) 小さいレストラン&ホテルを営む姉妹が発明してくれたものです。
ある日、料理を担当していた姉ステファニーが

1.りんごを煮詰めすぎたのをリカバリーするためにタルト生地を被せて焼いた。
2.タルト生地を敷くのを忘れてりんごを鍋に入れてしまったので上から被せて焼いてみた。
3.慌て者の叔母さんが表と裏をひっくり返してオーブンに入れたところ偶然厚手の美味しいアップルタルトが出来た。

など諸説あります。

いずれにしても偶然の産物で、ほっぺたが溶けて落ちちゃうような美味しいデザートができました。
ありがたや、ありがたや。
その美味しさ目当てでホテルは繁盛し、ついにはあのパリのマキシムの看板デザートに!まさにデザート界のフレンチドリーム!瞬く間にフランスを代表するお菓子になりました。

皆さんも作ってみてはいかがでしょうか。日本でならやはり紅玉がお勧めです。
「作るのはちょっと」という方は手軽くカフェに行ってみてはいかがでしょう。
大きくてもりんごならほとんど水分でさっぱりしているのできっと平らげられるはずですよ。

私の思い出のタルトタタンは、寒ーーーーーい2月のオルセー美術館の入り口のところにあるカフェのタルトタタンです。
美術館を窓越しに眺めながら、冷えた身体を温めてくれる甘さと、
乾燥した喉を潤してくれるリンゴの果汁が最高で、身体にすーっと染みわたった感覚を今でも思い出します。
その日はオルセー美術館で印象派の絵画を見ました。
初めて見る絵だけではないのに、学校で覚えたての印象派美術史の知識と一致していつになく興奮していました。
そのおかげで感覚が普段より冴えていたのかもしれません。

セーヌ川からの切るような風の冷たさと、どんよりしたグレーな空と、
街の独特の匂いとクラクションの音が今でも鮮烈に思い出せます。
ルノワールならきっと「ムーラン・ド・ラ・ガレット」ならぬ「カフェでタルトタタンを食べる女性」なんて絵を描いていたかもしれない。ぷっ。
といってもあのムチムチしたお色気は私には足りないから、モデルには程遠いな。

思い出話はさておき、皆さんも寒い冬にあったかデザートでポカポカ幸せになってくださいね♪

ではレシピです。
本場のレシピなので甘すぎる場合はお砂糖を控えめに♪

市販のパイ生地 1枚
きれいなリンゴ 6個
無塩バター 60グラム
角砂糖 100グラム
(日本のレシピでは砂糖60グラムくらいが普通です)

トッピング用
シナモンやレモン果汁 少々
刻みバター 20グラム
砂糖 20グラム

1)角砂糖とバターを型に入れ(オーブンにかけられる鍋でもよい)火にかけてカラメルをつくる。砂糖がカラメルになり焦げてきたら、一旦火から外す

2)リンゴの皮を剥いて芯を取り除き、4つか6つに切る。
  リンゴを型の中にきれいに並べる。最下面はリンゴの皮面
(ひっくり返したときにキレイだから)になるようにし、
   2段になる場合は上の段を下の段の向きと逆に並べる。

3)シナモンやレモン果汁、刻みバターを 入れて中火にかける。

4)底がキャラメル色になるまで焦げないように20分位煮詰める。←ここがもっとも味のポイント!

5)200度のオーブンで10~15分焼く。(フランスのレシピではここはない)

6)パイ生地を広げておく。

7)火傷に気をつけて、オーブンから型をとりだし、手早くパイ生地を被せる。

8)生地が膨らむのを防ぐ為、竹串やフォークで生地にまんべんなく穴を開ける。

9)200度のオーブンで20~25分焼く。(フランスのレシピではここで210度で30分焼く)

10)お皿を被せてひっくり返せばできあがり!


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ソムリエの追言「ワインの澱」


ソムリエの追言
「ワインの澱」



赤ワインを飲んでいると、ふとボトルやグラスの中のワインに
黒いカスのようなものが入っているのを見つけた事はありませんか?
澱 口に含むとざらざらしていて、黒ブドウの皮を思いっきり奥歯でかみ締めたようなエグ味や苦味を感じます。

ご存知の方も多いと思いますが、これがワインの『澱』と言われるもの。自然由来の成分なので、口に含んでしまっても人体や健康にはまったく問題ありませんが、美味しいワインを飲むためにはこの熟成の副産物とも上手く付き合っていかなければなりません。

今回はそんな澱にまつわるお話です。

成分的にはタンニンや色素などのポリフェノール、アルコールを生成し終わった酵母など。
これらが熟成する過程で、結合して大きな分子となり液中に溶けきれなくなったものが、
あのドロドロとした澱になります。

ワインを楽しむ際には邪魔者扱いされてしまいますが、
ポリフェノールという成分だけ聞くと、なんだか健康には良さそうですね。ワインのダイアモンド
またポリフェノールを多く含まない白ワインでも、酒石酸とカリウムなどのミネラルが結晶化し、キラキラとした透明な粒子がワインの中やコルクの裏に見える事があります。

「ワインの中にガラスの破片が入っている!」

というクレームをたまに頂きますが、ほとんどの場合はこの酒石酸カリウムの結晶です。おしゃれに「ワインの宝石」、「ワインのダイアモンド」なんて呼ばれています。もちろんこれも、自然由来の成分が結晶化したものなので、
舌触りはザラザラしますが飲んでしまっても何の問題もありません。

ちなみに昔訪れた箱根の温泉施設では、この澱の成分を利用して【ワイン風呂】なるものが人気を博していました。いくらワイン好きとは言え、さすがに温泉水は飲みませんでしたが、ほんのりワインの香りが漂うお湯に浸かって、ぽっかぽかに温まったのを憶えています。
温泉の説明文によると血行が促進されて健康にも良いそうです。

さて、赤ワインは通常、樽やタンクでアルコール発酵を行ったのちに上澄みの澄んだ部分だけを別の容器に移し(澱引き)、さらにフィルターをかけて不純物を濾過してからビンに詰めています。

この段階で不純物や酵母は取り除かれるので、ぶどうの皮や不純物がそのままボトルに入っている訳ではないのです。 出来立てのワインは透明感のあるクリアーな色合いをしています。
ビンに溜まった澱はその後の熟成の中で出来てくるのですが、
ワインの熟成はゆっくり進むほど複雑味が増して美味しいとされています。

カベルネ・ソーヴィニヨンやイタリアのネッビオーロのように、色が濃くタンニンも豊富なワインは酸化に強く、熟成のスピードも遅いので長期に渡って熟成させる事ができます。そのような長熟タイプのワインでは、澱のしっかり出ている事が上手く熟成が進んでいる目安にもなるのです。

お店で2000円~4000円で売られている10年熟成のボルドーを買う場合、ボトルの底を透かしてみて澱が出ていれば、ワインからの飲み頃を示すサインです。 肩に澱がべっとりと そうやってボトルを見ていると、たまに肩の部分に澱がべったりと張り付いてしまっているボトルに出会います。

これはもうボトルを寝かせても立たせても、デカンタージュしても、ワインがボトルの口を通るときに澱も一緒に運んでしまうので、多少はグラスに入ってしまいます。

保管上の問題で、倉庫やワインセラーで保存する際には一度ビンを立て、澱をビン底に集めておかないと、このように側面や肩の部分に澱が張り付いてしまいます。

ビン底のくぼみその為、長く寝かせるボルドーのワインボトルはビン底に沈めた澱が狭い範囲に集まりやすいよう、底の部分が凹型にくぼんでいるのです。
(このくぼみはパントと呼ばれています)

また、もしこのような澱の張り付いたボトルに当たってしまった場合、 「じゃあ飲めないのか?」 と言うと、そんな事はありません。グラスに注いでしばらくすれば(10分ほど)澱がグラスの底に沈んでくるので、
舞い上がらせないようにそっと飲めば、美味しく飲めます!

冒頭でも述べたように、澱自体は天然の産物なので、
多少口に入ってしまっても健康上まったく問題ありません。
気にせず飲んじゃいましょう。

ところで、飲み残したワインをそのうち料理にでも使おうと思ってとって置いたところ、
そのまま2~3ヶ月使わずに経過してしまった・・・なんて経験はないでしょうか?
ボトルの中では空気に触れたワインがどんどん酸化し、ワインの中に溶け込んでいたタンニン(渋味成分)やアントシアニン(色素)は完全に分離していきます。
最終的には酸化が進んだワインは透明なビネガーと、大量の澱に分かれるのです。

以前このような失敗をしてしまい、せっかくのワインを捨てるのはなんだか勿体ないという事で、危険を承知で特製ドレッシングを作ってみた事があります。

コーヒーフィルターで澱と液体を分離し、オリーブオイルと塩・胡椒で味付けをします。
割合はワイン酢(?)と油を1:1、よくかき混ぜて味を見ながら塩・胡椒を加えます。
出来上がりは、泡盛から造られるもろみ酢のような感じでしょうか?
思ったほど酸味がきつくなく、ワインのコクはしっかり感じられるので、
サラダにも使えますがさっぱりした鳥もも肉のステーキに合わせると、
とても美味しく食べられました。
もちろん、赤ワインに合う味わいです。

近年は健康志向が高まりを見せるなか、「無添加」という言葉に一つの付加価値が見出される時代になりました。 高性能なミクロフィルターを使用し、何度も濾過を繰り返す事でバクテリアなどワインを劣化させる成分を取り除き、酸化防止剤を使用しない「無添加ワイン」を造る生産者も増えています。

しかし澱を含む成分を徹底的に除去する事は、ワインの大切な味わいを削り取る事でもあり、こうして作られたワインは、ワインの醍醐味でもある熟成の妙を楽しむ事が出来ないのです。(この点、反対意見などあればぜひお聞かせてください)

無添加やフィルターの問題は専門家でも意見の分かれる問題ですが、
私個人の意見としてはいくら無添加であっても、フィルターのかけ過ぎでジュースのような薄っぺらい味わいに仕上がったワインを、買ってまで飲もうとは思えません。

ただしフィルターを使用するかどうかという問題は、ワインを造る上での一作業工程に過ぎず、フィルターをかけなければ高品質で美味しいワインが出来るという訳ではありません。
私がいままで飲んできた中でも、しっかりと造りこまれたワインはフィルターをかけていても感動的に美味しいですし、逆にフィルターをかけなくてもぱっとしない味わいのワインもたくさんあります。

結局、ぶどう栽培から発酵、ボトリング、保管・・・とわれわれ消費者が口にするまでの全ての要素が加わって、一本のワインが出来上がっているのです。


道上の独り言
僕は澱のあるワインにはシャンパングラス(フルート型)を用意してもらい、
ボトルに残したワインをゆっくりと注いでおきます。
1時間ほど時間をかけてグラスの中で澱を沈め、
チーズを食べる時に飲みます、これが最高。

当店で扱っているシャトー・ラ・ジョンカードシャトー・タランスを現地フランスで飲み比べると 圧倒的にシャトータランスの方が美味しく、日本に到着後は極端にタランスが不味い。
最初は違う物を送って来たと言って大げんかをしましたが、 実は旅に強いワインと極端に旅に弱いワインとがある事を40年前に知り クレームを付けたところ澱の多いワインが送られてきました。 それはかなり飲めるワインに成っていました。
偶然ですが、シャトー・タランスはオーガニックワインです。 フイルターを掛け過ぎると不味くて味の無いワインだと言う事をその時に知りました。


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バックナンバー( 最新5話分)

■コルクを抜くまでの保存方法や温度管理は?

ワインセラーは保存に適していない?
窮屈すぎるワインセラーの空間、その理由は・・・。

■ワインの上手な購入方法を教えて!

よくある質問の一つ、ワインはどんなお店で買うのが良いのか。
コストパフォーマンスの良い仕入れとは?
沢山種類を置いてあるお店のワインは高い?その理由とは・・・。

■ワインはご飯のようなもの?

フランス人は多くの日本人が毎回違ったワインを首をかしげながら飲む姿を見てびっくりしています。
日本人は毎回毎回違うお米を買うでしょうか?多くの方はお好みのお米があります。
同じようにワインも同じものを飲み続けることでワインに対する基準ができるようになります。

■ボルドーとブルゴーニュ

日本ではボルドーとブルゴーニュはフランスの2大生産地として、ワインの双璧のように言われていますが、実際のところは?ヨーロッパでのブルゴーニュの赤ワインの評価は?

■ワインは栓を開けてからどのくらいの時間美味しく飲める?

ワインや好みによりますが、一般に売られているワインなら30分位といったところでしょうか。しかし、カベルネソーヴィニョンの割合が高いものは2時間位経ったほうが美味しい場合が多く、何と開けてから翌日の方が美味しくなっているワインも??

■ボルドーの赤ワインは他と何が違うのでしょう?

ワインの歴史、生産量、どれをとってもボルドーは世界を圧倒しています。
フランスにとってそしてヨーロッパの歴史においてボルドーは大変重要な都市です。
フランス史上2度もボルドーに首都が置かれたことをご存知ですか?

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