名人のこだわり「舌が求める塩」
名人のこだわり
「舌が求める塩」
先日リクエストがあり、塩を使わないスープを作りました。
スープの旨味だけが、ぎゅっと凝縮されていると、
舌にはきつく感じられます。
そのスープに塩を加えた所、むしろ味が柔らかく、軽くなりました。
面白い事にその塩を使わないスープを飲んでいますと、
一緒に食べるパンとバターまで不味く感じます。
これは、普段食べている料理であれば、パンとバターの塩がほどよく感じられるのですが、
料理に塩が無いと舌がパンやバターに塩を求め、
結果パンとバターの塩までも「足りない」と感じ、バランスがおかしくなってしまうのです。
塩というのは、「ナトリウム」だけではありません。
ジビエなどでも塩を加えていなくても、ガラで出汁をとったりすると、
塩を入れていなくても、塩を入れているように感じます。
「ミネラル」というのは大きいのかもしれません。
塩にもいろいろとありますが
フランスの海の塩で言いますと、
北の方ではミネラルが多く、南は塩だけの味に近くなっていきます。
塩だけの味の塩は調整が難しくなります。
少しでも入れすぎると、しょっぱい、と感じてしまう為です。
ミネラルが多い塩はしょっぱいという味以外のものも感じるので、
味が柔らかく、多少の幅を持たせられます。
ジビエなどですと一匹一匹の個体差がありますので、その幅を利用します。
ただし、ミネラルが多すぎますと今度は味が付き過ぎてしまい、
下手をすると素材の味以上に目立ってしまいます。
FONDではスペインのハモン・イベリコを作る時に用いられている塩を使っています。
大変に中庸だからです。
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