
豊かでしっかりとしていて、丸く繊細
ドルドーニュ川右岸地区の魅力あふれる赤ワイン

コート・ド・カスティヨンのワインは深い色合いで、強いアロマです。イチゴやキイチゴなどの赤い果実や、プラムやチェリーなどの果実の要素が感じられます。ヴィンテージによりアロマは多様で、干プラムや皮革などの香りも感じられます。味わいは率直で、丸く、優しくて力強く、硬いけれども繊細なタンニンにより舌触りが豊かで、心地よい余韻へとつながります。
豊かでしっかりとしていて、凝縮して、偉大なフィネスのあるワインで、若いうちでもとても楽しめますが、熟成に耐える力にも優れています。 メルロが主体で、カベルネ・フラン、カベルネ・ソーヴィニヨンをアッサンブラージュします。

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コート・ド・カスティヨンは、サンテミリオンの南東に広がる一帯で、このAOCは赤ワインのみです。ワインは豊満で、コクとまろやかさがあります。
コート・ド・カスティヨンの土地は、ぶどう栽培には第一級の場所です。丘陵の斜面と台地に広がる畑は、粘土石灰質と軟質砂岩(砂屑が石灰質で固められた砂岩)の土壌で、ワインは凝縮して力強くなります。 斜面の下部と川に近い沖積土の段丘では、泥土と砂の含有量が多く、砂礫も含まれています。 この土壌から生まれるワインは、なめらかで魅力的でアルコールのしっかりしたワインです。 |

外観 | 黒味を帯びたガーネット透明感もあまりありません。 黒味がかったガーネットややグラデーションの幅が大きい。 透明感とエッジの部分に赤・朱色・茶色 |
香り |
八角、丁子などの甘・苦いスパイスの強い香り、ラズベリーのリキュール、スミレのドライフラワー、 熟成のブーケ |
味わい |
なめらかな口当たり 酸味が穏やかです。果実味、コク、渋味がバランスよい。 質感のなめらかさのなかで果実味の甘さ旨さを感じます。 |

きれいな熟成感。これはメルロー種によるものです。
実は、メルローというブドウは、ボルドーの中でも、比較的新しいブドウ品種。 歴史的記録では、18世紀後半には、サンテミリオンなどの内陸部でメルロー種が使われていたようです。その後、現在では、この地を含め、ボルドー全体でも、メルローの栽培比率が多くなっています。(高級ワインのメドック地区周辺を除きます。)
ボディもコクはあるものの、柔らかなタイプに仕上がるので今回のような、バランスのいい熟成になったと思います。
柔らかいといっても、それは、カベルネ・ソーヴィニヨンに比べてのこと。カベルネ・ソーヴィニヨンが主体ですと、10年程度でこのなめらかさ、に熟成するのは難しい。もっと時間がかかります。そうそう、そのメルローで、世界をあっといわせたワインがお隣のサンテミリオンやポムロールから続出しました。
ポムロールのシャトー・ペトリュス 、シャトー・ル・パン、 サンテミリオンのシャトー・ヴァランドロー。
今では、5桁(けた)、6桁の高額ワインです。 このためか、メルローのブームが起き、世界でメルロー100%のワインが増えていきました。
とはいえ、この地は、その気候や土壌(どじょう)からメルローとともに歩みを進めてきた。シャトー・ピュイ・ランドリーの造り手は、畑の土や環境への敬意を払い、自然なワインを目指しているといいます。造りこんだメルローではなく、自然体のメルローの熟成を感じたのは、偶然ではないと思います。
そんな、土地にも、血なまぐさい歴史が。
矢が降り注ぐ、砲弾(ほうだん)が炸裂(さくれつ)する。 馬の下敷きになる者、手斧(ておの)を振りかざす者、怒号(どごう)と悲鳴、爆音と金属のぶつかり合う音が辺り一面に響き渡る。 甲冑(かっちゅう)をつけた兵士達の壮烈(そうれつ)な戦い。
イギリスとフランスとで行なわれた100年戦争<1337-1453>。まさに、戦場となった地。
「カスティヨン=ラ=バタイユ(Castillon-la-Bataille)」【バタイユ(仏語で 戦いの意)】
その地を、中心にしたワイン産地、コート・ド・カスティヨン。
イギリス人には、イングランド軍の指揮官であるジョン・タルボットが敗れた地といえばわかるようですが。 我々、日本人には今ひとつ。<当時日本は、室町時代。銀閣寺で有名な足利義政将軍の時代です。>
ワイン好きにはボルドー銘壌地 サンテミリオンの隣といった方が判りやすいです。
そんな歴史的な地域(?)は、ワインの歴史にも、登場。 ボルドーの最も古いぶどう畑の一つとしてその名を残しています。 そう、カスティヨンのブドウ畑は歴史を見てきた。 近現代でも、フランスワインにとって、イギリスは欠かせません。 100年戦争当時 イギリス領だったボルドー。イギリスとフランスの狭間で、揺れ動いた激動の地。
ワインで暮らす人々は、ワインを、ブドウ畑を守るため、必至に生き抜いた。 その人たちの、思いが、土地とブドウに受け継がれて、今の目の前のワインがある。
そんなことに思いを巡らせながら、ワインを飲んでみる・・・。 深いです!