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改訂版 新・スラム街の少女 ―灼熱の思いは野に消えて― 第十八話 「第7章 極悪人シーア3」

女剣士小夏-ポルポト財宝の略奪
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梗概

カンボジアから日本に留学中の少女サヤは、ポルポト軍クメールルージュの 残党に突然襲われた。サヤが持つペンダントには、ポルポトから略奪した 数百億の財宝のありかが記されているからだ。絶体絶命の危機を救ったのは、 偶然に居合わせた女剣士の小夏(こなつ)だった。

ポルポトの財宝を略奪するため、小夏はカンボジアに渡る。 幼い頃の記憶を失っている小夏にとって、記憶を取り戻していく旅となった。 ほんのちょっと前にカンボジアで起こった20世紀最大の蛮行。 ポルポトは全国民の1/3にあたる200万人以上を殺害し、 それまでの社会基盤を破壊した。教育はいらない。ポルポトはインテリから 粛清を始めた。

メガネをかけている、英語が喋れるだけで最初に粛清された。 破壊された教育基盤を立て直すため、サヤはカンボジアのかすかな希望の光だ。 カンボジアの子供たちが日本のように誰でも教育をうけられるようにするため、 日本に送られたサヤ。 小夏、サヤは立ちはだかる悪魔の集団を打ち破り、 ポルポトの財宝を奪えるのだろうか。 その鍵を握っていたのは、カンボジア擁護施設を立ち上げた関根であった。

愛は国境を越えてやってきた。
不思議な力を持つスラム街の少女プンとともに、
日本人駐在員は愛と友情をかけて、
マフィアと闘う。
女剣士・小夏 ―ポルポト財団の略奪―

プンは明け方、いやな夢を見た。怖い顔のおじさんがナイフを持っている。プンの内臓をえぐるって言って近寄ってくるのである。
「おじちゃーん」プンは大きな声で木村を呼んだ。プンは叫んだ自分の声で目が覚めた。プンは木村が大好きだ。始めて会ってその目を見た時、心の奥底から懐かしい感じがした。もう一人のお兄ちゃんのような気がした。
(おじちゃんは初めて会った時、1000バーツも花代をくれた。
おじちゃんはお兄ちゃんに「靴を買いな、お前も大きくなったら同じことを誰かにしてやれ」って、優しく言っていた。二人で靴を買いに行ってお兄ちゃんがニコニコして靴を選んでくれた。新品の真っ白な靴を二人お揃いで初めて買うことができた。死んだお兄ちゃんは、死ぬ前にあたしに言った。
「あの日本人のおじさんの言ったことを忘れないで、貧しくても知らない人にでも親切になれる大人になってね。いつでもプンを守っているよ」)
プンは幼い頃から不思議な力をもっている。将来に起こることを夢に見たり、頭にふと浮かんだりすることがある。他の人には見えないものが見えることがある。
死んだお兄ちゃんが守ってくれている、そう思って安心してプンはまた眠りについた。

事務所に出勤したのが10時30分を回っていた。
「所長、連日で早いご出勤ですね」俺を見ずに、忙しそうにパソコンのキーを打ちながらアップンが嫌味を言った。アップンは8時には出勤している。ムッとしたのをぐっとこらえて、愛想よく言った。
「ジャーン、高級ホテルのフレンチレストランを約束通り、予約をとったよ。来週の火曜日だよ。メニューに時価って書いてあるのだけは、注文しないでね。会計の時、バンジージャンプよりスリルがあるから。それと、今日はズボンのジッパーは上げておいたからね」
「所長、ありがとう。ワイシャツの襟に口紅がついていますよ」
「ゲッ」慌ててトイレに行き、鏡に映したが・・・・・・口紅はついていなかった。
(アップンめ、・・・・・・朝、女性といたことをチェックしたな)
「ありがとう、アップン。口紅は落としておいたよ、もてる男はつらいね、あはは。ところで、気がついたのだけどお願いしている調査にいくつか追加して欲しいものがある。先ず、クンの調査だ。あと、カーオが服役していたときの同房で先に出所した人の調査もして欲しいね。カーオは服役中、復讐計画を立てただろう、きっと、仲間と相談したな。よくドラマでもあるだろう。服役仲間と出所してからつるんで悪いことをするって」
「クンの調査は既にお願いしてあります。なるほど、服役中か。所長、それほんとに所長が考えたのですか?ニンさんじゃあないですか?」
「・・・・・・」ムッとして、机に向かった。

「あと、数日で実行だな。タバコが切れた、買いに行ってくる」カーオが言うと、
「買い置きしておいたほうが良いわよ。昼間はあまりうろつかない方がいいわね」クンはカーオに言いながらお金を渡した。カーオのお金はいつもクンが出す。自分がお金を出すことでカーオから捨てられないと思っている。
カーオがタバコを買いに出るとすぐに、シーアがクンの傍に寄ってきてニヤニヤしながら言った。
「俺にも金くれよ」
「何よ、こっちに来ないでよ、そっちにいな」クンは窓の方を指差し、強い口調で言った。
「いいおっぱいをしているじゃねえか」
シーアはピンクのシャツの上からいきなりクンのボリューム感のある乳房を鷲掴みにした。
「何すんだよ、くそじじー」クンは両手で思いきりシーアを突き放した。
「元気がいい魚は食いごたえがあるぜ」
突き放されたシーアは、ひるまずクンににじり寄り、いきなりクンの腹を殴り、堪らずしゃがみこんだ頬も叩き、両手を持ちあお向けに床に倒した。シーアは嫌がるクンを押さえつけた。片手で両手を抑えつけもう片方の手で乳房を引き出すと乳首を吸い始めた。シーアはスカートをめくり上げ薄い布の上から秘所を手の平で摩り始めた。
「汚い指を入れてやるぜ」シーアはクンの耳元で囁いた。太い指がクンの双丘から奥に進入し、中指を曲げスポットを繰り返し突き始めた。クンは堪らず声を上げた。
「・・・・・・もっと突いて」
何時の間にかシーアの背中にクンの手は回っていた。
「シャワー浴びて来るわ・・・・・・カーオには黙っておくわ。今、仲間割れをされたら困るわ」
「いずれ殺すさ」シーアは不敵な笑いを浮かべた。

小一時間でカーオはタバコとビール、食料品などを買って戻ってきた。カーオはすぐに二人の様子がおかしいことに気がついた。クンはシーアと初めて会った時、シーアに対し良い印象を持っていなかった。残忍そうな目と薄い唇が嫌いだと言っていたのである。
あれほど嫌っていたシーアのそばにクンが座っている。
(シーアめ、俺の大切な鵜に手を出しやがったな。少しの間でも二人きりにさせたのは、まずかったな。しかし、俺が感情的になったらシーアのことだ、歯向かってくるだろう。覚悟の上でやったに違いない)
「カーオ、どうしたの、なにか変だよ」微笑みながらクンは言った。
「変なのはおまえらじゃあねえの」
シーアを睨みカーオは言った。
シーアの目が鋭くなった。
クンは立ち上がりカーオの後ろに回り、カーオの胸に手をまわして耳元でささやいた。
「打ち合わせをしていたのよ。離れていたら出来ないでしょう」
(いま仲間割れはまずいか・・・・・・)
カーオは煙草を取り出して火を点けた。
しばらくし、プーがやって来た。プーが入ってくると部屋の雰囲気が明るくなる。 プーはシーアを避けるようにしてカーオのそばに座った。シーアは、いつも目で犯すようにプーを舐め回すように見る。
「パパデーンの家の近所で誰かが私たちのことを聞き回っているみたいよ」
「くそ、思ったより早いな。俺に妹がいることが奴らにわかったな」
「あたしの言った通りにして良かったでしょう。雇った女のカノム(御菓子)にプーと名乗らせておでん屋マイに送りこんだのは、私のアイデアよ」クンが自慢そうに言った。
「おでん屋マイの方から何か報告があったか?」カーオがクンに聞いた。
「相変わらず厳重な警戒体制のようね。昼夜、マイの家にはビッグベアの仲間が警備しているわ。プンには、あのでかいのがずっとくっついているわ。それと、カノムが辞めたがったのでお金を倍払うと言って何とか引き留めておいたわ」
その時、クンの携帯電話が鳴った。 クンが勤めているソイナナにあるカラオケ店の仲間のホステスからの電話だった。
「それで、なんて言ったの?あのくされチンポが・・・・・・いつよ、来たのは? エッ、昨日の夜なの。何で早く電話してくれなかったの・・・・・とにかくありがとう」
「どうした?」カーオが即座に聞いた。
「昨日の晩、あたしが勤めているカラオケクラブに二人の男が来たらしいの。私の写真を見せて店に勤めていないか聞いたんだって。普通だったら知らないって言ってくれるじゃない。ボーイの野郎がチップをもらってぺらぺらしゃべったみたい。あのボーイ、この間、あたしを仕事が終わったらディスコに行こうって誘ったのよ。小指みたいなチンポをして一丁前に誘わないでよと言ったから、根に持っているんだわ」クンはボーイの顔を思いだし憎々しげに言った。
「なんか、逆に追い詰められているみたいね。猫の首なんか切ったからよ。ねえ、やめよう。もやめようよ、お金なんていらないわ」
プーがカーオに哀願するように言うと、
「ふざけるな。ネエチャン。ここまで計画しといてやめようだ。売春宿に売り飛ばすぞ」シーアがプーに迫ってきた。
「それ以上、プーに近づくなよ。シーア、いいか言っとくぞ、妹に手を出すなよ。計画通りだ」カーオは怒鳴った。
「せめてプンは傷つけないでよ。そうじゃないと私は降りるわ。あなた達でやってよね」
今度の計画はプーがいないと実行できない。
「シーア、プンは傷つけないよな」カーオはシーアを睨みつけながら言った。
「はーい、はーい。そうしますよ」
シーアは、既に臓器移植のシンジケートに連絡をしてあったので生半可な返事をした。 タイでは、貧困層から腎臓などの内臓が買われ、富裕層の患者に移植されているのは有名である。それ専門のシンジケートがあるらしい。
カーオは急いで皆を集めた。
「ここの居場所がばれたかもしれない・・・・・・」

 



泰田ゆうじ プロフィール
元タイ王国駐在員
著作 スラム街の少女 等
東京都新宿区生まれ




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