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名人のこだわり「血と肉」について(前編)


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名人のこだわり
「血と肉」について(前編)

魚でも肉でも、血の事を考えると理解がしやすいです。
血は鮮度が落ちやすく、肉の臭みの元にもなります。

血自体を食べる、という事に関しては
ヨーロッパではソーセージなどで血を使いました。
日本にはその習慣はあまりありませんでした。
むしろ血は出来るだけ抜きたい、という所があります。
日本料理の鴨ロースなどでも、焼いた後に重しで押さえて血を抜いてしまうくらいです。

食肉の文化自体は無かったわけではありません。
江戸時代の生類憐れみの令などは、あれは捕って食べていたからこそ「禁止」という事ですよね。
決して明治の文明開化の時に入って来たという事ではありません。
表立って食べられていなかったというくらいの話です。

以前、牛や豚のと畜の際にストレスを掛けない事が大事だ、というお話をしましたが
それは、まず「ストレス」が血に混じり、成分が変わってしまいます。
それが身に廻り、肉にも変化が及ぶと考えていただくと理解しやすいと思います。

スッポンでも同じで、
しめる時に興奮させてしまうと血がドロッとしますが、綺麗にしめるとサラッとしています。

手前がスッポンの血のムースです
手前がスッポンの血のムースです


鰻屋さんに聞いた事があるのですが、
九州から鰻を輸送する際に、「針麻酔」を行ってみた事があったそうです。
すると、グッタリとして輸送の際にも鰻が暴れず、
届いたその鰻は、割いたときに血がサラッとしていたそうです。

ジビエで言いますと、
鴨やピジョン(鳩)などの家禽を窒息させたものは身が甘くなります。
その方法は、気絶させた状態で興奮させずに
ガスで窒息させるので、ストレスがかからないのです。

肉の部位の中で、血が多い所、すなわち影響を受ける部位といったらレバーです。
鮮度がいいうちは生はもちろん焼いても甘いですが、
鮮度が落ちると、すぐに味が変わってしまいます。

まだ冷蔵庫など無かった時代の、昔のフランスでは
城の領主などは鳥のモモ肉は使用人に食べさせ、
自分達はムネ肉が食べていました。これも血の問題です。
ムネよりもモモの方が血が多い為、痛むのが早いのです。
ムネがちょうど食べ頃の時にはモモは臭みが出始めるのです。

一度出た血が身に戻ると、一番臭みが出る、という事もあります。
真空パックで売られている肉などでは、
血の吸収材も一緒に入れられてはいるのですが、
この状態は一度出た血が身に戻りやすくなってしまいます。

お寿司屋さんでもマグロにサラシを巻いていますが、
それも身から出た血がまた戻らないように、と言う為です。

次週は「血と肉」についての後編をお送りします。



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