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私と柔道、そしてフランス… ー 第六十六話 問題多発!ー

【安 本 總 一】
早大柔道部OB
フランス在住
私と柔道、そしてフランス…
2020年3月26日

- 第六十六話 問題多発 ! -

 コーセーとの関係改善役を仰せつかった私は直ちにコーセーを訪れました。

 面会したのは、1969年以来コーセーが手掛けているロレアル高級化粧品部門の「ランコーム」担当部長・大野氏と外国部長の鶴巻氏でした。二人とも長らくロレアルに係わってきたので、ロレアルの世界戦略についても熟知していて、ロレアルの一般品市場への参入計画もよく理解しているということでした。

 この二人によると、当初、すべてコーセーに任せてもらえるものと思っていたところ、一般品ルートは山陽スコット(株)に、それも総代理店として遇し、コーセーに対してはなかった仕切値に対して20%の割引まで与えていることが判明して、一挙に状況が変ったとのこと...。

  それからほぼ毎日コーセーに通い、なんとか5月27日のパーティーには、大幹部の出席は難しいものの、工場関係者を中心にした社員の出席を認めてもらいました。一度与えた不信感を拭い去ることは非常に難しいことをつくづく感じたものでした。

 その翌週だったかに、パーティーのために来日したアジア担当ディレクターの歓迎会がヴィリエ専務宅で行われ、数ヶ月前にコーセーの専務に就任した「小林禮次郎」氏(創業者・孝三郎氏の長男、後の二代目社長)に会いました。彼は早大理工学部応用化学科出身ということで、後輩の私に気安く声をかけてくれました。

 第一声は「安本さん! 大変なところに来ちゃったね! 今度ゆっくり話そう! ハハハ!」でした。彼には何を言われるかと緊張していた私ですが、この第一声ですっかり気が楽になりました。それから、彼には仕事上でも、プライベートでも大変お世話になりました。

 ところで、コーセーの営業部長に挨拶に行った際、自己紹介する間もなく、のっけから大声で叱られました。「ロレアル製品が一般市場に流れるようになって、コーセーに大きな迷惑がかかっている!」と。

 部長の説明によると「岐阜の薬局はコーセーの最重要顧客で、ロレアルのヘアスプレー・エルネットを大量陳列をしてくれていたが、近くの雑貨店に問屋を通してエルネットが入り込み、薬局の向こうを張って、同じく大量陳列を始めた。それはまあ許せるとして、許せないのは10%引きの安売りをしていることだ。薬局はロレアル製品の販売をやめた!」とのこと。

 営業部長の怒りは収まらず、さらに「廉売されているロレアル製品を我々は売り続けることはできない。ロレアル製品をすべて引き上げる!」と言うのです。

 これを隣室にいた小林保清・営業担当常務(創業者・孝三郎氏三男、後の三代目社長)が聞きつけ、とりなしてくれたお陰で部長の興奮は収まりましたが、私としては、残念ながら反論する術もなく、ただただ「これも勉強だ!」と思いながら、聞いているしかありませんでした。

 定価販売をモットーとするコーセーと、小売店の廉売を抑えることができない山陽スコットとに、まったく同じ製品を流せばこういう問題が起こることは、ロレアルも十分に承知していました。しかし、ロレアルはこのような全方位流通を世界中で成功させていたので、日本でも頑固にこの流通政策を堅持していきます。

 一方、山陽スコット(株)との打ち合わせも始まりました。

 こちら、ティッシュ・ペーパーのメーカーはこれまでに男性化粧品・メンネンの総代理店としてある程度結果を出していましたが、新たに世界一の化粧品会社の総代理店になったということで、興奮気味でした。

 3月に、ロレアル製品新発売記念キャンペーンとして、全国66社の問屋がプロモーションを掛けてかなりの好成績を得たものの、ロレアル製品のような、普及品の2~3倍する高価格商品を買う消費者はまだまだ限られていて、4月に入り、返品となって問屋に戻ってきていて、返品がかなりの数に上っていることが分かってきました。

 ロレコスとしては「返品は一切受け入れない」方針を打ち出していたため、返品がスコットの倉庫に滞留し始めていて、大きな問題になる兆しを見せていました。

 次回は「第六十七話 パーティー開催」です。  


筆者近影

【安 本 總 一】
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