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改訂版 新・スラム街の少女 ―灼熱の思いは野に消えて― 第二十三話 「第9章 悪魔の日曜日 2」

女剣士小夏-ポルポト財宝の略奪
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梗概

カンボジアから日本に留学中の少女サヤは、ポルポト軍クメールルージュの 残党に突然襲われた。サヤが持つペンダントには、ポルポトから略奪した 数百億の財宝のありかが記されているからだ。絶体絶命の危機を救ったのは、 偶然に居合わせた女剣士の小夏(こなつ)だった。

ポルポトの財宝を略奪するため、小夏はカンボジアに渡る。 幼い頃の記憶を失っている小夏にとって、記憶を取り戻していく旅となった。 ほんのちょっと前にカンボジアで起こった20世紀最大の蛮行。 ポルポトは全国民の1/3にあたる200万人以上を殺害し、 それまでの社会基盤を破壊した。教育はいらない。ポルポトはインテリから 粛清を始めた。

メガネをかけている、英語が喋れるだけで最初に粛清された。 破壊された教育基盤を立て直すため、サヤはカンボジアのかすかな希望の光だ。 カンボジアの子供たちが日本のように誰でも教育をうけられるようにするため、 日本に送られたサヤ。 小夏、サヤは立ちはだかる悪魔の集団を打ち破り、 ポルポトの財宝を奪えるのだろうか。 その鍵を握っていたのは、カンボジア擁護施設を立ち上げた関根であった。

愛は国境を越えてやってきた。
不思議な力を持つスラム街の少女プンとともに、
日本人駐在員は愛と友情をかけて、
マフィアと闘う。
女剣士・小夏 ―ポルポト財団の略奪―

当惑して携帯でニンに電話をすると、ニンはホアヒンに行かなかったのかすぐに遊園地に来ると言った。
ニンにビッグベアに知らせるように言われ、ビッグベアにも電話をかけた。
1時間後、ニンは遊園地に着いた。
入口で先に着いたビッグベアと待っていた。
「今、ビッグベアの仲間が遊園地の中をくまなく探している。まだ、発見できない」 ニンが着くなり言った。
「いなくなったトイレに案内して」
俺は、すっかり意気消沈していたがニンとビッグベアを連れて二人が失踪したトイレに案内した。
ニンは女子トイレの中を注意深く見た後に、
「いなくなった時のことを細かく話して。どうでも良いことでも細かく話して」
「ジェットコースターに乗って、そのあとプンがメリーゴーランドに乗りたいと言ったら、プラーがプンにトイレに付き合ってって、言ったんだ。それで俺と三人で女子トイレまで行って、俺はあそこのベンチで待っていたんだ。いつまで経っても出てこないので女子トイレの中を見に行った。そしたら中には誰もいなかった。突然消えてしまったんだ」
「トイレに行こうと言ったのはプラーなのね。プラーってどこの子」
「大和の子」
キッとニンは俺を睨み、
「知っている女の子ってカラオケ店の子なの。大和・・・・・・。それでトイレから誰も出ていないのね。しっかり思いだして、消えるなんてことはありえないの。どうでもいいことでもなんでも思い出して話して」
がんばって思い出し、
「そうだ、トイレの近くでチョウチョウが二匹飛んでいた」
「それは、ほんとにどうでもいいわ・・・・・・」ニンは呆れて俺をしげしげと見た。
「そうだ、トイレから清掃員が二人出て行った。トイレに入る時に清掃中だったんだ。プラーとプンがトイレに行くと清掃中の看板をはずしてくれて中に入れてくれた。それで清掃員も中に入ってそのあと中の清掃員と出てきた」
ニンはしばらく目をつぶりその時の光景を瞑想して、
「清掃員は大きな箱のようなもの持って出て来なかった?」ニンは確信を持って聞いた。
「台車の上に清掃道具が入った木箱があった」
「それね。どうせ清掃員はマスクして髪をタオルで巻いていたでしょう」
「何故、わかるの?」
ニンは質問に答えずに続けて、 「恐らく、プラーはカーオの仲間だわ。清掃員の一人はクンでもう一人はトイレの中で急遽、清掃員に変装したプラーね。道具箱の中にプンは閉じ込められたのね」
「プラーが・・・・・・」
「皆を集めて、この遊園地にはプンはもういないわ」
「どうしたらいい?」哀願するようにニンの顔を見た。
「マイに報告。マイの家でカーオからの連絡を待ちましょう。警察に連絡するかどうか微妙ね」

マイの家に皆は集まった。ニンとビッグベアの他にアップンとプラモートも呼ばれて集まった。
マイはプンの失踪を聞くとその場にうずくまり震えて泣き出した。ナカジマが眉間のしわがさらに深くなった。
重苦しい空気が淀んでいる。
ニンが口火を切った。
「プラーは、大和に勤めていたのね。プラーはカーオの妹のプーでしょう」
「警察に届けたほうが良いかしら?」アップン俺ではなくニンに聞いた。
「普通は誘拐が成立してから、すなわち犯人から連絡があってから警察は動くと思うの。カーオから連絡があったら警察に届けたほうが良いわね。警察には誘拐専門チームがあるわ」
その時、俺の携帯に電話がかかってきてとると、カーオの声だった。
微妙な言葉を間違えないように電話をアップンに変わってもらった。
「プンを預かっている。仲間に凶暴な男がいて、いつプンを傷つけるかわからない。2百万バーツ出せばきっとプンは無事に帰れるが、今日中に金を用意したほうがいいと思う。また電話する。警察に届けてもいいが、そのときは恐らくプンとは一生会えないだろう。今晩また電話をする」
カーオはそう言って一方的に電話を切った。アップンは電話の内容を皆に伝える。
ニンが落ち着いた声で、 「大丈夫よ、マイ。誘拐犯人は顔を覚えられるのがいやで誘拐した人を殺すことがあるみたいだけど、今回は既に犯人の顔がわかっているのでむやみに罪を重ねないと思うの。アップンさん、カーオからの電話の内容をメモしてね。それでこれまでの経緯を警察に届けてくれる。それと実は、わたし今日は、ホアヒンに向かわなかったわ。昨日、木村さんから話を聞いて何か事件が起きる予感がしたの。それでプラモートさんに頼んで、今朝パヌさんと一緒にエッカマイのクンのアパートに行ってもらったの。何か手がかりが残っているのじゃあないかと思って」
そう言うとニンは銀行のATMの預金払出票をだした。
「これが残っていたカーオの服から出てきたわ。引出店がウドムスックのATMでしょう。ウドムスックはスクンビット通りソイ104辺りで、はずれでしょう。そこで2万バーツも引き出すのは、おかしいと思わない。たぶん、その近くでアパートを借りるお金を引き下ろしたのかも知れないわ」
ニンがそこまで話したとき、
「すぐに戻る、ちょっと待っていてくれないか?プラモートちょっと付き合ってくれ」
そう言うと、プラモートを連れてマイの家から出た。
「プラモート、さっき送ったメールの返事が来た、読んでくれ」
タイ語の読書きが出来ないのでプラモートに頼んだ。
ボス、スクンビットのウドムスックアパート404号と書いてあります」
マイの家にもう一度入ると皆に、
「皆、俺に1時間ほど時間をくれないか?たった1時間だけでいい。それまで警察には届けないでくれないか、頼む」
皆に頭を下げた。俺はプンもそしてプラーの心も助けたいと思った。
「いいわ」ニンは木村の心がわかるかのように何も聞かずに即答で答えた。
「行くぞ」プラモートを急き立てた。
(ありがとう、ニン・・・・・・)

 



泰田ゆうじ プロフィール
元タイ王国駐在員
著作 スラム街の少女 等
東京都新宿区生まれ




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